16 4/28 UPDATE
マーベルの映画は、キャラクターそれぞれのシリーズがあり、彼らが団結するのが『アベンジャーズ』である。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はタイトル通り、キャプテン・アメリカのシリーズ最新作だが、内容的には『アベンジャーズ』のスピンオフ的な要素が強い。
キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)と、アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)。この二人がアベンジャーズの中心人物だ。本作では彼らが考え方の相違から決裂してしまい、アベンジャーズのヒーローたちも、二人のどちらか側に付いて、仲間同士で戦いを繰り広げることとなる。
登場人物が多く、名前も複雑ではあるが、魅力的なキャラが多いから楽しめると思うし、簡略ではあるが経緯の説明もある。本作では抜けて登場しないキャラがいる代わり、すでにニュースリリースされているとおり、アントマンなどの新規参入もある。さすがハリウッドの人気作品は、仲間割れも華やかなのだ。
これまで友人だったヒーローたちが、互いに持ち技をぶつけて格闘する姿には、『アベンジャーズ』シリーズを見てきた者にとって、やりきれない思いで泣けてきそうになる。ただしここは、キャプテン・アメリカの行動を援護するか阻むかの戦いなので、殺し合いではない。ヒーローもののお約束で酷い事態にならないのではなく、あくまでそういう意図の対決なので、結果がわかりきっているとは想像しないでほしい。また、ここでとある初参加のキャラクターが、思いがけず緩衝材となるのも感心する。陰惨になったかもしれない戦いをこのキャラが朗らかに引っ掻き回すのが、演出と脚本、俳優による設定の妙だ。
物語は、強大な力を持つアベンジャーズを脅威とみなし、国際的な管理下に置こうとする動きがキーとなる。それと同時に、キャプテン・アメリカと、バッキーというキャラの友情も重要な要素となる。二人は数奇な運命によって長寿の超人となったのだが、キャプテン・アメリカがスーパーヒーローであるのに対し、バッキーは悪の組織の洗脳を受けてしまっている。もしバッキーの洗脳がとけたなら、彼が被洗脳中に犯した犯罪は裁きを免れるのか。また、洗脳がとけたとどうやって判断するのか。キャプテン・アメリカは昔馴染みの感覚に頼るが、他者には客観的根拠が要る。それを求める筆頭が、アイアンマンとなってしまう。彼も、キャプテン・アメリカとともに戦ってきた、古いよしみもある友人だ。この三人の戦いの場面は、やりきれない切なさが溢れる。
悪を倒して大団円を迎えるアベンジャーズと違い、本作はいかんともしがたい過去の軋轢がある友人に対し、せめぎ合う感情と理性をどうコントロールするかという、人間関係のドラマである。この緩やかな流れで終わる物語は、戦いではなく、思慮と心の回復を描いており、ヒーローものの範疇を超えた豊かさを感じる。
text: Yaeko Mana
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
監督:アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ
製作:ケビン・ファイギ
製作総指揮:ルイス・デスポジート/ビクトリア・アロンソ
出演:クリス・エバンス/ロバート・ダウニー・Jr./スカーレット・ヨハンソン/セバスチャン・スタン/アンソニー・マッキー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2016年4月29日(金) 全国ロードショー
Marvel-japan.jp
(C)2016 Marvel.