15 12/02 UPDATE
2015年初頭にオランダの名門ショップ兼レーベル、ラッシュ・アワー(RUSH HOUR)がジャパニーズ・ハウスの黎明期の立役者の一人、寺田創一のクラシックを集めたコンピレーションをリリースしたことは、世界中で再評価が起こっている現在のジャパニーズ・ハウスブームに火を点ける一枚だったことに疑いの余地はないだろう。
本作『ハウス - Once Upon A Time In Japan...』は、そのジャパニーズ・ハウスをさらに押し上げるべく、長年熱心な活動で発掘作業をおこなっていたブラウザー(BRAWTHER)とアリックスクン(ALIXKUN)の二人がコンパイルした3枚組みのアナログ・レコードのコンピレーション。ブラウザーは近年アンダーグラウンドで強い影響力を誇るフレンチ・ディープハウス・シーンの中心人物で、2015年にアルバム「エンドレス」をリリースした重要アーティスト。またアリックスクンは、KLODIOとレーベルJAZZY CONSCOUSを運営し、DJ活動も積極的にこなす日本在住のアーティストであり、その二人の共通点はレコードコレクターでもあり、ジャパニーズ・ハウスを掘り下げてきたということ。
寺田創一音源の中でも相当レアな金沢明子「沢内甚句」のリミックス、ジャパニーズ・ハウス・シーンのレジェンドとして日本の音楽シーンに数々の楽曲を提供してきた福富幸宏、高木完と藤原ヒロシのタイニー・パンクス、ストリクトリー・リズムからもリリースしたエクスタシー・ボーイズ(ECSTASY BOYS)、寺田創一との共作が再発されたマナブ・ナガヤマ率いるジャズ・デリック(JAZZDELIC)、マンガ家の故中尊寺ゆつこがハウスにハマっていた時期の隠れリミックス、日本の伝説的レーベルヒサ・イシオカによるBPMレコーズのコンピ「ラ・ロンド」(LA RONDE)にも参加した松井寛、アレックス・フロム・トーキョーもCLAREMONT56のレア音源発掘コンピシリーズ「ORIGINALS」でピックアップしたVIOLETSなど、二人の熱意とディガーとしての知識を結集した内容となっている。
メジャー/アンダーグラウンドを問わず、純粋に楽曲の良さだけで選ばれた全15曲は、我々に新しいジャパニーズ・ハウスの魅力を伝えてくれるだけでなく、様々なミッシングリンクを繋ぐ日本のクラブミュージック史に刻まれるべき重要な作品と呼べるだろう。
text: yk
BRAWTHER & ALIXKUN PRESENT
『ハウス - Once Upon A Time In Japan...』
LES DISQUES MYSTIQUES & JAZZY COUSCOUS
3,900円[税抜]/レコード3枚組
発売中