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THINK PIECE

THE FLAMING LIPS

Wayne Coyne interview at ACL 2010

10 11/17 UP

photo&text:Erina Uemura edit:Detz Matsuda translation:Matthew Chase

今年で活動27年目を迎えるアメリカ・オクラホマ出身のサイケデリック・ロックバンド、ザ・フレーミング・リップス。
2003グラミー賞・ベストロックインストゥルメンタルパフォーマンス賞を受賞し、
2009 サマーソニックで2度目のインドアステージのトリを努めた。
バンドのフロントマンでるウェイン・コインのインタビューをオースティンシティリミッツフェスティバルで決行。

 

──
ザ・フレーミング・リップス」というバンド名は、どのようにして思いついたのですか?
「すごく適当に考えたバンド名なんだ。最初はあまり良い名前とは思っていなかった。今は皆に気に入ってもらえているけどね。1983年、僕らは出身地のオクラホマシティーにいた。当時はアメリカンハードコアとか反レーガン派の政治的なグループがたくさんいたんだけど、僕らはあまり一つの事に縛られず色々な事を歌いたかったんだ。何かに対する怒りの音楽ばかり作る気もなかった。たまには怒りを表現した音楽も作るけどね。どんな音楽でも通用するバンド名にしたかったんだ。でも僕らは『ザ・フレーミング・リップス』を一度も好きだと思った事はなかった。もっと良いバンド名前が思い付いたら、その名前に変更すればいいと思ってた。でも皆にこの名前がウケたから、変えずにいるんだ。でも結局そんなもんなのかな。だって、『ローリングストーンズ』って名前もあんまり良いとは思えないけど、マディー・ウォーターズやボブ・ディランの歌にもなっているし、雑誌名にもなってるだろ。音楽さえ良ければ、バンド名は何でも良いと思うし人気だって出るよ。だからバンド名は重要ではないと思うよ。音楽が酷いのに、かっこいいバンド名のグループもいるしね」
──
音楽の話に移りますが、最近ピンク・フロイドの「狂気 (Dark Side Of The Moon)」をカバーしていますよね。
「僕らは皆ピンクフロイドが大好きなんだ。特に彼らの後期の作品がね。あまりにも好きだから、僕にとってピンクフロイドの曲をカバーするのは簡単なことだよ」

──
「狂気 (Dark Side Of The Moon)」の全曲カバーはすばらしかったですよ。
「どうもありがとう。itunesのプロデューサーが僕らにエクスクルーシブセッションを依頼してきて、itunes用に録音出来るように、スタジオの時間も設定したんだ。僕は『Embryonic』(*Flaming Lipsのオリジナルアルバム 2009発売)をつくるために僕らの歌を全て使ってしまったから、ピンクフロイドの『狂気 (Dark Side Of The Moon)』をカバーするのはどうか勧めてみたんだ。彼らも納得してくれた。ただ、人気のレコードには法律的なしばりが色々あるから、このカバーが本当に実現するか心配だった。一週間後にやっと許可が下りた。それからスタジオを予約して、数日後に全てを行ったんだ。ヘンリー・ロリンズやピーチズ、僕の甥のバンドと一緒にね。彼らとはPCでやり取りをした。その当時ベルリンにいたピーチズとも。努力すれば報われるということを学んだよ。『狂気 (Dark Side Of The Moon)』は偉大なレコードだよ。43分の中にインストゥルメンタルな曲があるところも気に入っているんだ。歌ばかりなのはあまり好きではないんだ。(インストゥルメンタルだと)曲を膨らませることが出来るし、いくつかの曲は似ているからしばらくそのムードの中に浸る事が出来る」

 

──
ではニューアルバム「Embryonic」はファンにどのように受け入れられたとお思いですか?
「僕らのアルバムを気に入ってもらえてとても幸運だったと思う。『プログレッシブ』とか何とか呼ばれているジャンルを好んで聴く変人タイプの人に救われたよ。"Do You Realize"や"Yeah Yeah Yeah Song"が好きなフレイミングリップスファンにとっては、このアルバムは少し変わった感じがするかもしれない。でも僕らの全てが好きなファンには、このアルバムは自然に受け入れられるだろう。僕らには、常に変った感じが付きまとっていると思う。レコードが完成に近づいていくにつれて、『これはすごくクールで変なアルバムになるぞ!』と思ったよ。ただファンがこれを気に入ってくれるかどうか全く分からなかった」

──
あなたたちにとって、これは大きな転機(ターニングポイント)だったと思う?
「転機だったかは分からない。でも『とにかく僕らが作りたい音楽を作ればいい』とすごく恐れ知らずになれる時があるんだ。それは世界で一番単純なことのように思えるんだけど、普通は皆『これで本当にカッコいいのかな?』と不安になるものだ。でも、その幸運な(勇気の)力が備わった時に何にも惑わされず自分のやるべきことをやることができる。Embryonicはそんな力が働いて完成した。曲を作りながら、もっとシンプルで変わったことに魅了されていった。僕らの考えることは、おかしすぎないかなと思ったときがあった。でもEmbryonicに関しては、どんなにおかしいと思っても、それがこのアルバムの進むべき方向なんだと確信していた。だから、ある意味このアルバムが僕らの転機と考えても良いかな。でも僕らがいつもこれ程恐れ知らずになれるとは限らない。人生にはたくさんの出来事が起こっているように、ある日目が覚めて、『今日は何でも出来る気がする』と思えても、次の日はそうでもない。もし幸運にも勇敢になることが出来たら、その時は、たとえば好きな子に告白したり。な?でもどんな結果が出るかわかんないよな。だから結果を恐れて不安になってしまう。でも、勇気が出る時に行動を起こしたら、Bam! Pink Floydが言ったことを成し遂げることが出来るんだ。『やった!』と。それによって自分の人生を一時的でも全く別次元に持って行くことができる。でも結局元の次元に戻ってしまうことになる。だからいつも良い結果を生むとは限らない。後悔する場合もある。やらなかったことを後悔するよりもやったことを後悔する方がずっといい。この世に自分の意思を伝えるには行動を起こすべきだ。自分らしく生きるべきだ。辛いときもあるだろうけど。そしてアーティストやミュージシャンは辛い。なぜならずっとアーティストでいられるのはファンに好きになってもらわないと。自分らしくいたいのにいられないときもあるから」