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THINK PIECE

MUGONKA

中国で封印された実話をもとに製作された
世界映画の旗手、ワン・ビン監督の最新作。

11 12/7 UP

text:Sawako Akune

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これまでのドキュメンタリーと異なり、本作では初めて、フィクションのかたちをとられました。それはどうしてですか。
「この作品を撮ってその質問はほんとうによくされます(笑)。これまでの作品がドキュメンタリーでしたから、ノンフィクション作家というイメージが強いのでしょうね。でも学校ではフィクションの撮り方を勉強したのです。ところが卒業後はまだ若く、経験もありませんでしたから、すぐにフィクションを撮れるような資金はありませんでした。ドキュメンタリーならば資金も少なくて済むし、撮りやすいのではないかと思い、『鉄西区』に取りかかったのです。そこから年月が経ち、環境も技術も資金も調ったので、今回、劇作を撮れることとなりました。とはいえこの『無言歌』の構想は、2004年頃からありました。小説『告別夾辺溝』に出会ったのは、『鉄西区』を撮り終えて、とある企画のためにパリに向かう飛行機の中でしたから」

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今後撮りたい作品はありますか。
「農村を背景にした作品を撮りたいと考えているところです。上海、北京、重慶……、いくつもの都市が繁栄し、日に日に大きな経済力を見せつけてはいますが、中国はやはり農民の国なのです。日々飽くことなく農業に従事する彼らは何を考え、どのような場所で、どのような環境に取り巻かれて生活しているのか。そこで人と人とはどのように関わっているのか。そこに今、強い興味を抱いています」

 

『無言歌』

1949年に人々の熱狂のもとに中華人民共和国を建国し、56年には国に対する自由な批判を歓迎すると言った毛沢東。人々は未来を思い、はつらつと発言する……その数ヶ月後、彼らを徹底的に弾圧する「反右派闘争」が始まるとも知らずに。映画の舞台は1960年、中国西部、ゴビ砂漠の収容所。あまつさえ過酷な労働にくわえ、折からの飢饉で収容所の環境は劣悪なものとなる。究極の状況まで追いつめられて、人間はその尊厳を保つことができるのか。ワン・ビン監督初の長編劇映画にして、日本初公開作。12月17日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。

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