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THINK PIECE

Masanobu Sugatsuke × Zenta Nishida

編集者・菅付雅信 × BRUTUS編集長・西田善太が語る、編集術。

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photo: Kentaro Matsumoto text: honeyee.com

 

──
雑誌における〈編集〉のスキルには、時代をどう読むかという視点も含まれる。菅付さんは、どういった視点で時代を読み解いているのですか?
S
「特別なことは別になくて、僕は編集者は情報の料理人だと思っているので、今旬な食材は何で、客はそれをどう料理したら喜んでくれるかというのを考えるだけですね。でも僕の場合は、客の注文通りに料理するというよりは、シェフおまかせの創作和食屋みたいな立場かもしれません。それはシェフである編集者が偉そうに自分本位に作るという意味では全くなくて、今ならこういう食材でこう料理した方が絶対に客が美味しく、または面白く感じてくれるはずだという、客とのぎりぎりの緊張感のゲームですね。編集者は匿名的で業界内で認知されればいいという考え方が根強くあるのですが、僕は“B to B”(Business to Business)ではなく、“B to C”(Business to Customer)のつもりで編集をしているんですよ」
N
「今の編集は、デザインの技術の進化があり、ある程度のレベルまでなら、簡単にクオリティの高いモノが作れるようになった。また写真もよくなっている。僕が若い頃に見ていた雑誌の写真は、ものすごく作り込んでいたんです。今はカメラマンがテイストを持っていて、加工しなくても使いやすい写真が増えている。そういった技術の向上は、編集者にとってもすごくやりやすい環境になっていると思います。雑誌は成長期を経て、成熟期に入っているともいえますね」
──
逆に言えば、雑誌というフォーマットには、これ以上大きな変革は起きないということですね。
N
「表現手段としては、すでに完成されていて、紙やインクを変えたりといった印刷上の遊びもやりつくした感があります。形態としてはこれ以上の変化はないでしょう。でも、編集のスキルはどんどん進化していると思います。最近はよく電子雑誌の話を持ちかけられることが多いのですが、今はまだ紙を用いた雑誌の形態で見せるのがベストだと僕は思っています」

 

S
「僕もまだまだ雑誌を含めた紙の媒体には可能性があると思っています。2年前に『The New York Times』が破産しそうなになり、メキシコの会社が買い上げたのですが、その社長は、新聞にはまだまだ可能性がある、と言っていました。実際、今『The New York Times』はデジタル化しそれを有料化することで非常に成功しています。どのメディアもデジタルというチャンネルは持つようになるので、よりコンテンツ力とそれをまとめる編集力で、各メディアが競う時代になるはずです。やっと入れ物の論議が終わって、中身と味を語る時代になるはずですよ」
N
「WEBと雑誌の大きな違いは、いつ出すかというタイミングの意味があると考えています。アーカイブ化され、過去の号がフラットに購入できるようになると、最新号の意味がなくなってしまう。電子雑誌にするなら、今出ている号は安くていい、でも過去の号は3倍の価格にする、というモデルをよく語っているのですが、誰にも相手にしてもらえません。バックナンバーを買いたいという声もありますが、半年前の気分のモノを今読まれると困るんです」

──
WEBをやっている側からすると、WEBの時間軸はユーザーひとりひとりの個人的な時間軸に委ねるような感覚がありますね。誰かが何かを検索していて出てきた記事が5〜6年前のモノであったとしても、その人にとっては、記事を見つけた「今」の情報なのです。これは、いわばパーソナルな時間軸です。その点、雑誌はパブリックな時間軸を持っていますよね。『BRUTUS』で言えば、都市部に住むある一定層のパブリックな時間軸に沿っている。
N
「その考えは面白いですね。でも、パーソナルな視点を編集するのはすごく難しくないですか?」
──
答えになるかわかりませんが、ハニカムの場合、雰囲気やムードを作り続けることだと思っています。ブログやアーカイブも含めたこれまでの記事の連なりが「ハニカム的東京」「ハニカム的ファッション」というものを暗示しているような、そんなイメージです。
N
「僕らがかつて雑誌をすみずみまで読んで強烈に影響されたというような原体験を、WEBマガジンでも体験している人が今いるなら、それは面白いと思います。ただ、〈編集〉という視点でみれば、雑誌でもWEBでも編集者の魂は変わらないのかもしれないないですね。編集者には“自分で決めること”が必要です。みんなで決めることは正しいけれど面白くない。だから最後は自分で決める。TwitterなどSNSで、思ったことを横流しして反応を得るのは心地よいですが、自分自身で考えることが必要です。雑誌は、自分で考える時間の手助けになるようなメディアだと思います。そもそも、編集者になるような人は不特定多数の『みんな』と集団的に考えを共有したり、共感しあったり、というようなができない連中でしょう(笑)」

 

『はじめての編集』(ピエブックス)

著者: 菅付雅信
価格: 1,890円[税込]
発行: アルテスパブリッシング
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