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瀬戸内海に浮かぶ小島、豊島(てしま)に建つ、築80年を超えると思われる古い民家。道路から赤いガラス越しに、建物の中や庭が見える。中に入ると横尾忠則の絵が。『瀬戸内国際芸術祭2013』夏会期にあわせてオープンした横尾忠則の個人美術館、「豊島横尾館」だ。改修設計を手がけたのは建築家の永山祐子。横尾の絵や庭園とからみあう、重層的な空間が広がる。
最初の建物を入ると庭に向かった壁も赤いガラスになっていて、何もかもが真っ赤に染まっている。庭に出ると、岩だけが赤い。横尾が作り上げた、異次元の小宇宙を思わせる庭園だ。その先の母屋は真っ二つに切られていて、床には川が流れている。まるでこの世とあの世をつなぐ川のように。さらに進むと大きな筒の中へ。流れ落ちる滝に囲まれて、どこまでも落ちていくような感覚に襲われる。壁中に滝のポストカードが貼られていて、床の鏡に反射しているのだ。
館内に展示された横尾の平面作品は、三連の大作絵画「原始宇宙」のほか11点。世紀末スイスの画家、アルノルト・ベックリンの「死の島」をモチーフにしたものもある。巨大な岩でできた島へ小舟で向かう人が描かれた、謎めいた絵画だ。豊島はもちろん死の島ではないけれど、横尾はどこにいても「この世ならざるもの」の気配を感じているのだろう。宝塚歌劇や骸骨、福笑いなど幾重にも意味がこめられたモチーフがが豊島の風景と溶け合い、生と死の間にあるものを暗示する。
船でなければアプローチできない島だからこそ、日常と隔絶された時間と意識が味わえる。赤い景色や岩、滝に導かれて、さらなる旅への扉が口を開ける。
text: Naoko Aono
豊島横尾館
2013年7月20日開館
香川県小豆郡土庄町豊島家浦
tel: 0879-68-3555(豊島美術館)
10:00~17:00(10月~2月は~16:00)
火曜休(月または火が祝日の場合水曜休)
鑑賞料500円(「瀬戸内国際芸術祭2013」作品鑑賞パスポート提示で会期中1回無料)
http://www.benesse-artsite.jp/teshima-yokoohouse/
「豊島横尾館」イメージ 提供:永山祐子建築設計
横尾忠則「葬の館」(そうのやかた)2012年
The Funeral Home
Oil and synthetic resin paint on canvas
193.9 x 258.9 cm
photo by Nobutada OMOTE (SANDWICH GRAPHIC)
横尾忠則「原始宇宙」2000年
The Primitive Universe
Acrylic and collage on canvas
227.3 x 546 cm