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六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト−来たるべき風景のために

六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト−来たるべき風景のために

“疑い”から生まれるアート、疑うためのアート。

13 9/13 UPDATE

最近、とくに311以降、いろんなことが疑わしく感じられるようになってきた。別に急に悪い人が増えたわけではなく、それまで当り前だと思っていたことに少しずつ、ほころびが見えてきたからだ。

2004年から日本のアートシーンの"定点観測"をしてきた「六本木クロッシング」の4回目になる今回は、そんなもやもやした状況を強く意識したキュレーション。森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実に、日本の現代美術を注意深く観察している二人の外国人キュレーターが加わって、より広い視野から日本のカルチャーと社会とのかかわりを考察する。

今回ピックアップされたのは在外アーティストも含めた29組。大半が70~80年代生まれの若手だ。そのうちの一人、丹羽良徳は「反原発デモを逆走してみる」「ルーマニアの共産党と交渉して社会主義者を胴上げする」といったパフォーマンスの記録ビデオを作っているアーティスト。常識とは少しずれた行動が、その常識への疑いのまなざしを生む。

現代の町の光景などが描かれた風間サチコの木版画にはいびつな経済発展や戦争などが表現されている。大津波に翻弄される原発のイメージは戦時中に発行された、荒波を押し分けて進む勇壮な軍艦の絵柄を引用したものだ。立場が違うと見解も異なる近代史への視線が、一見懐かしい感じもする絵柄に交錯する。彼ら若手に混ざって戦後日本の前衛芸術シーンを牽引してきたベテランたちも。日本の現代アートがどのように近代を超えてきたかを検証する。

またこの展覧会ではアートがギャラリーの外へもはみ出し、美術館が議論の場になる。森美術館がある六本木ヒルズ内の毛利庭園にはインドの少数民族、サンタル族に伝わる土壁工法の家が出現する。美術館内では「議論のためのプラットホーム」を形成するグループやNPOが、アート作品と並んで「言葉」で表現を試みる。

展覧会タイトルの「アウト・オブ・ダウト」には「疑念から生まれる何か」と「疑念の晴れた状態」という、二つの違う意味があるという。さらに「get out of doubt」というと「不可解で不確かな状況から脱出すること」、「run out of doubt」は「これ以上疑念を持ちたくない」という意味になる。疑いから逃げ出すのか、あえてそのただ中に立ち止まるのか、いずれにしても油断できない状況なのは確かだ。

text: Naoko Aono

『六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト−来たるべき風景のために』
9月21日〜2014年1月13日

森美術館
東京都港区六本木6−10−1
六本木ヒルズ森タワー53階
tel: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00〜22:00(火〜17:00)会期中無休
一般1500円
http://mori.art.museum/contents/roppongix2013/


1岩田草平×プロマイノリティ《アディバシの家 原型》2010年

2丹羽良徳《ルーマニアで社会主義者を胴上げする》2010年
Courtesy: Ai Kowada Gallery

3金氏徹平《Ghost in the Liquid Room (lenticular) #1》2012年
Courtesy: ShugoArts, Tokyo