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建築家のアントニ・ガウディ、漫画家の井上雄彦。遠く離れた国に生まれた二人のアーティストが時代を超えてコラボレーションする展覧会が開かれる。「バガボンド」「SLAM DUNK」などの傑作を放ち、真宗大谷派東本願寺の屏風絵「親鸞」など、漫画の枠を超えた活動を展開している井上が描き下ろしの絵によってガウディの人間像に肉薄する。
世界遺産にも指定され、バルセロナを訪れる人は必ず立ち寄るといっていい「サグラダ・ファミリア」や「グエル公園」。その設計者であるアントニ・ガウディは1852年、バルセロナの南に位置する田舎町で生まれた。幼少時に病を患い、じっと座って過ごすことも多かったという。当時としては珍しく、初等教育から大学まで卒業したが、幾何学以外の成績はぱっとしなかった。建築学校でも授業はさぼって、図書館でさまざまな時代の様式の建築を独学する。
ガウディは自らを語ることが少なく、周囲の人の証言も残っていないため、人となりについては謎が多い。若い頃はぱりっとした服に身を包み、美食と酒を求めて享楽的な生活を送った、という見方もある。が、すくなくとも後半生は敬虔なキリスト教徒として「サグラダ・ファミリア」の建設にすべてを捧げていた。服装にもかまわなくなり、市電にひかれて瀕死の重傷を負ったときもあまりに貧しい身なりだったため、当時すでに有名建築家だったにもかかわらず、最初はガウディだと思う人はいなかったという。
井上は人間としてのガウディに少しでも近づくため、バルセロナのガウディ建築や生家などゆかりの場所を訪れ、「サグラダ・ファミリア」で働く職人たちやガウディの研究者など、ガウディの足跡を追う人々と対話する。今回井上が描く作品のうちのひとつは縦3.3メートル、横10.7メートルという世界最大級の越前和紙に描かれる。職人を尊敬し、常に職人と仕事をしたガウディの気持ちをくみ取ろうと、井上はこの巨大な和紙を漉く作業にも参加した。1500年以上の歴史を持つ越前和紙の技を受け継ぐ職人たちが、ガウディとともに井上に教えてくれたことは決して小さなものではないはずだ。
機械やコンピュータがいろいろなものをつくってくれる現代でも、何かを超越した才能を持つ人の手が生み出すパワーにはかなわないことがある。ガウディと井上雄彦、それぞれ唯一無二の"手"を持つ二人の出会いから、より深いガウディの造形と人物像があぶり出される。
text: Naoko Aono
「特別展 ガウディ×井上雄彦 ‐ シンクロする創造の源泉 ‐ 」
会期:2014年7月12日〜2014年9月7日
場所:森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
Tel. 0570-063-050(ローソンチケット内)
10時〜20時(入館は閉館の30分前)
会期中無休
入場料1800円より
http://www.gaudinoue.com
アントニ・ガウディ ≪モンセラー(ムンサラー)修道院付属聖堂、頭部側立面図≫ 1876年作原画の複製 ©Abadia de Montserrat
≪サグラダ・ファミリア聖堂模型≫ 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 ©Junta Constructora del Templo de la Sagrada. All rights reserved.
井上雄彦 ≪トネット≫ 2013年 ©I.T.Planning