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宇宙を見るアート、宇宙でつくるアート。

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ミッション[宇宙×芸術]‐コスモロジーを超えて

14 7/08 UPDATE

巨大な惑星や恒星、彗星や星雲、そんな目に見えるものからブラックホールやダークマター、ダークエネルギーなど目に見えないものまでが充満しているという宇宙。その宇宙をテーマにした展覧会が開かれている。

美術館に入るとロビーやエレベーターに文字が書かれている。谷川俊太郎らが書いた、宇宙に関する詩が書きつけてあるのだ。何枚もガラスが重なる、そのガラス1枚ずつに書かれた文字を重ね合わせると一つの詩になる仕掛けもある。空中に言葉が漂っているようで、宇宙への期待感が高まる。

展示室にはアーティストが宇宙をモチーフに作ったアートが並ぶ。たとえば鈴木康広の「りんごの天体観測」は、りんごの表面の点々をプラネタリウムの星に見立てたもの。そういえばニュートンは落下するりんごを見て万有引力を発見したんだっけ、と小さなりんごに広大な宇宙が凝縮されているような気分になる。逢坂卓郎のインスタレーションは宇宙線を感知するとLEDの青い光が消える。知らない間に私たちの身体も通り抜けているという宇宙線が、思ったより頻繁に到来しているのがわかる。地球は遠い空からの見えない"雨"にさらされているのだ。

宇宙へ思いをはせるだけでなく、実際に宇宙へ飛び立とうとする試みも紹介されている。球体や立方体の不思議なオブジェは人工衛星の実物大模型。模型といえども本物と同じように作ってある。人工衛星の打ち上げ時にはこのような模型を作って、地上でさまざまな実験を行う必要があるからだ。
「イプシロン・ザ・ロケット」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHIエアロスペースが開発、2013年に試験機の打ち上げに成功した小型人工衛星打ち上げロケットだ。固体燃料を使い、ローコストで組み立ても簡素化されている。人工知能を搭載し、打ち上げ前の点検を自動化することで、打ち上げに必要な人員と時間を削減できる。ロケットの打ち上げをもっと日常的なものにしたい、との思いからだ。
 
自分たちでロケットを作って宇宙へ行こう! と壮大な夢にチャレンジしているのは「なつのロケット団」だ。漫画「なつのロケット」の作者、あさりよしとおやアーティストの八谷和彦らで結成、小型の液体燃料ロケットの打ち上げに挑戦している。いい年した大人が子供のような夢に挑んでいるのだが、大人なので材料も大人買いできる。とはいっても打ち上げのハードルは高く、会場には燃え尽きた部品やカメラも。でも最初からうまくいくことなんてない。諦めないでがんばれ、とつい熱くなってしまう。

一辺が10センチのサイコロ型をしたオブジェは今年2月に打ち上げられた芸術衛星「ARTSAT1:INVADER」だ。この衛星からはパネルの温度や衛星の姿勢、太陽電池の発電量といったデータが送られる。そのデータをもとに人の心に訴えるメディアアートを作るのが、この衛星の目的の一つだ。国際宇宙ステーション「きぼう」の中で若田光一飛行士が小さなオーロラのようなものを出現させたのは、逢坂卓郎が考えた「Spiral Top - II オーロラオーバル」。LEDで光るコマのような物体が無重力空間を回転し、光の軌跡を描く。三次元墨流し的なアートだ。地上とは違う環境が表現の幅を広げてくれる。未知の空間が広がる宇宙なら、新しいアートが生まれそうだ。

text: Naoko Aono

ミッション[宇宙×芸術]‐コスモロジーを超えて
開催中〜8月31日
東京都現代美術館
東京都江東区三好4−1−1
tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10時〜18時(7月18日以降の金は〜21時)
月曜休(7月21日は開館、7月22日休館)
入場料1300円
http://www.mot-art-museum.jp

1逢坂卓郎《Appearance and Disappearance Marl》2004年 © Takuro Osaka

2チームラボ《Cold Life / 冷たい生命》(書:紫舟)2014年
3名和晃平《Direction#54》2012年 Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH

(以上すべて参考図版)