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1930年に建てられた、小さいけれど味わいのあるビル。銀座の真ん中で戦災も生き延びてきたこのビルが3週間だけ、時代を映す鏡のようなアート・スペースに変わる。イベントのタイトル「THE MIRROR」は、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」での「芝居、すなわち芸術とはこの世のありようを鏡に映し出すことだ」という台詞からとったもの。80年以上も"この世のありよう"を見つめてきたビルが映し出すものとは何だろう。
参加するのはアーティスト、建築家ら32組。年代も国籍もさまざまだ。幻想的な映像インスタレーションで人気のさわひらき、仮設のホテル・プロジェクトなどで常に話題になる西野達、解体された家屋の廃材や灰、石といったものを素材に力強いオブジェを作る土屋公雄、コンピュータ制御のミシンにわざと"バグ"を仕込んで奇妙に引き延ばされたようなパターンを生み出す宮田彩加といった作家たちがビルのあちこちにアートを設置する。ビルがまるごと、アート作品になる感じだ。
最上階には編集者であり、知の巨人、松岡正剛がセレクトした本や、書籍に関する未公開資料を見せる"屋根裏部屋"が出現。空間デザインは隈研吾だ。ミュージアムショップのデザインはトラフ建築設計事務所が担当する。1階の期間中限定のアート・カフェ「チカッパ」では熟練のブレンダーが作ったウィスキーなどが出される。またこの展覧会のために茶室をデザインする内田繁が内装デザインを手がけた銀座グランドホテルもTHE MIRROR展のサテライト会場になる予定だ。
期間中はほぼ毎日、イベントが行われる。アーティストのワークショップやパフォーマンス、ライブペイント、トークなどのほか、銀座の旦那衆によるレクチャーの企画も。学校や普通の美術館とは違う形で美について学ぶことができる。また1階では特別展示「デザインの黎明」を同時開催。博物館明治村の開村50周年を記念して明治村が所有する、「鹿鳴館」や「有栖川宮邸」の家具や、遠藤新らがデザインした家具などを展示する。インテリアから日本の黎明期のデザインを探る試みだ。
この展覧会の入場は完全前売り予約制。チケットは毎日13時〜17時と、17時〜21時の二つの時間帯に分けられ、それぞれ200枚ずつの限定販売になる。こぢんまりとしたビルで人混みにもまれることなく、心ゆくまでアートと向きあえる。
text: Naoko Aono
『THE MIRROR』
会期:2014年10月16日〜11月9日
主会場:銀座4丁目THE MIRROR館
名古屋商工会館・東京都中央区銀座4丁目3番6号
サテライト会場:銀座グランドホテル
東京都中央区銀座8丁目6番15号
13時〜17時、17時〜21時
月曜休(11月3日は開館)
料金:1,000円(日時指定、完全前売り予約制)
チケット:http://the-mirror-ginza.com/
(クレジット)
名和晃平「PixCell-Deer#28」「PixCell-Double Deer#6」「PixCell-Deer#29」2012
Courtesy of ARARIO GALLERY and SCAI THE BATHHOUSE
撮影:表恒匡|SANDWICH
フロリアン・クラール「The Yamanote Ring - Rheingold」 (2007- 2014) C-Prints, 600 mm×300 mm
さわひらき「Envelope」
2014
video, colour, stereo sound, mirrors
sound by Dale Bernig and Saya (Tenniscoats)
11'20"
commissioned by Tokyo Opera City Art Galley
©Hiraki Sawa, Courtesy of Ota Fine Arts