14 12/03 UPDATE
1980年代初頭にキャリアをスタートさせて以来、常に注目を集めてきたジュリアン・オピー。日本でも2008年に水戸芸術館で個展を開催、電通本社のコミッションワークなどでも知られている。現在SCAI THE BATHHOUSEで開かれている個展は同ギャラリーでは4度目のものになる。
オピーが現在のようなスタイルを確立したのは90年代から2000年代にかけてのこと。BLURのメンバーをシンプルな線で描いたアルバムジャケットや、ポーズをとるモデルの作品は街角のサインやピクトグラムを連想させて人気となった。どんなに単純化されていても本人を知っていればそれとすぐにわかるのは、卓越した画力があるからだ。オピーは人間が視覚的情報をどのように処理するのかを本能的に知っているのではないかとも思える。2000年代に入ってコンピュータ・ネットワークが世界中を覆い尽くして以降、大量のデータの海の中で情報を届けたい相手に確実に届けるにはどうすればベストなのか、多くの人が知恵を絞っているけれど、オピーの絵が大きなヒントになるかもしれない。
これまで友人をモデルにすることが多かったオピーだが、今回の個展ではロンドンと東京のストリートで見かけた人々をモデルにした。モデルにはとくに条件はなく、ランダムに選ばれている。絵画のように見えるけれど顔のアップはアクリル板を切り抜いた切り絵のような手法で表現され、ビニール素材で作られた全身像は太い輪郭線の中心がわずかにくぼんだ、立体的なものだ。電通本社の彫刻「歩く人」と似た手法で制作されたLEDによる作品もある。
オピーは「今世界がどんな気分なのかを描写する現代の言語を探している」のだという。今回の作品は「原始時代から行われてきた人間の描写方法、つまり一瞬の顔のイメージを記録するポートレイトを、モザイク画や油彩といった古典的な方法ではなくてLEDやビニール、アクリルなど、現代のコマーシャルな素材で表現したいと思った」ところから出発している。その表現も「古代の象形文字から古典の巨匠、浮世絵、現代のマンガまで、さまざまなアート言語から抽出した形」なのだという。これまでも過去の巨匠や名作にさまざまな形で引用してきた彼らしい方法論だ。常に新しいモチーフや素材を開拓しているオピーの転換点に立ち会える。
text: Naoko Aono
ジュリアン・オピー個展 'Street Portraits'
開催中〜2014年12月20日
SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23柏湯跡
tel. 03-3821-1144
12:00〜18:00、日・月・祝日休
《_OMP2715.jpg.ai.》2014年、インレイ・オーバーレイアクリルパネル、170 x 125 x 3.5 cm
《_OMP3071.jpg.ai.》2014年、インレイ・オーバーレイアクリルパネル、170 x 125 x 3.5 cm
《_OMP3045.jpg.ai.》2014年、インレイ・オーバーレイアクリルパネル、170 x 125 x 3.5 cm