15 2/17 UPDATE
昨年、ビョークの「バイオフィリア」をアプリとしては初めてコレクションに加えたニューヨーク近代美術館。同時に今春、回顧展を開くことを発表していた。どんなものになるのか、数ヶ月も前から話題になっていた「ビョーク」展がついに開幕する。音楽、アート、演劇、ビデオ、映画、ファッション、さまざまな領域のクリエイターとコラボレーションしてきた彼女の、デビュー以来の軌跡をたどるものだ。
といっても一つの曲の中に複雑で繊細な物語を織り込むビョークのこと、単純に年代ごとの作品を追う展示ではない。これまでもビョークと協働してきたアイスランドの詩人、ションが参加、事実とフィクションを巧妙にとりまぜた20年間の豊穣な物語だ。会場でも劇場のような展示や音に包み込まれるような空間、写真、PVなどが並ぶ。
MoMAの建築・デザイン部門シニア・キュレーターであるパオラ・アントネッリは「ビョークはいつも実験とサプライズを繰り返している」という。「彼女のアートの根幹は音や音楽だけれど、グラフィックやデジタルデザイン、映画、科学、哲学、ファッション、そのほかたくさんのものを内包する多次元的なものなのです」。
この展覧会をキュレーションしたMoMAの総合ディレクター、クラウス・ビーゼンバックはビョークについて「ぎょっとするほどオリジナルかつとてもクオリティの高い映画監督であり、作曲家だ。あらゆるコラボレーションに対してオープンな態度で彼女の音楽世界を視覚化し、観客を巻き込む」と評している。
展覧会の構成は重層的だ。ロビーでは「バイオフィリア」に登場するテスラ・コイルなどの楽器があらかじめプログラムされたビョーク作曲の音楽を奏でる。
マロン・アトリウムではビョークの実験的なサウンドとションによるフィクショナルな伝記が絡み合う。8枚のフルアルバムを紹介するコーナーではそれぞれのアルバムに多彩なキャラクターが割り当てられ、強烈なヴィジュアルを通じて彼女の音楽を表現する。
それら壮大な空間体験に、クリス・カニングハムが制作したPV「オール・イズ・フル・オブ・ラヴ」に登場するロボットやアレクサンダー・マックイーンがデザインしたベル・ドレス、武田麻衣子がデザインしたヘッドピース「アトモスフィア・リエントリー(大気圏再突入)」などが加わる。マロン・アトリウムではさらに2014年夏にアイスランドで撮影された「ブラック・レイク」のフィルムの上映も。監督は「ミューチュアル・コア」のPVで注目を集めたアンドリュー・トーマス・フアンだ。洞窟や峡谷、溶岩、苔といった風景が痛みや消滅、再生を暗示する。
異なる次元を自在に行き来し、音楽や映像で新たな物語を紡いでいくビョーク。軽やかだけれどどこまでも深い、その世界を体感できる。
text: Naoko Aono
『Bjork』
会期:2015年3月8日〜2015年6月7日
会場:ニューヨーク近代美術館
11 WEST 53 STREET, NEW YORK, NY 10019, USA
tel. +1(212) 708-9400
10時30分〜17時30分(金〜20時)
無休
入館料25ドル
http://www.moma.org/
Björk, Medulla, 2004
Credit: Photography by Inez van Lamsweerde & Vinoodh Matadin. Image courtesy of Wellhart Ltd & One Little Indian
Bjork. Still from "Black Lake," commissioned by The Museum of Modern Art, New York, and directed by Andrew Thomas Huang, 2015. Courtesy of Wellhart and One Little Indian
Björk, Still from "All Is Full of Love" directed by Chris Cunningham, 1999.
Credit: Courtesy Wellhart Ltd & One Little Indian.