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SWIMMING POOL

SWIMMING POOL

無人の空間に写り込む、フィクションと現実の間

15 5/08 UPDATE

フランク・ボーボはフランス出身、ブルックリン在住のフォトグラファー。図書館や遊園地、映画館などをまるで標本のように切り取ったシリーズを制作している。何かのサンプルを淡々と集めるようなその態度はベルント&ヒラ・ベッヒャーらデュッセルドルフ派のフォトグラファーたちや、都市化するアメリカの孤独な光景をクールな筆致で描いた画家、エドワード・ホッパーらの影響だという。

東京のPaul Smith SPACE GALLERYで展示されるシリーズはパリやニューヨークのプールを撮ったもの。ほとんどが無人で、画面は左右対称だ。
「人がいない光景を撮るのは時代を超越した写真にしたいから。人がいないから見る人がいろいろと想像することになるし、天井にかかるアーチなど建物の特徴に目がいく」

開いている時間には走り回る子供たちやおしゃべりなどの喧騒に満ちていたはずのプールだけれど、ボーボの写真には空虚さだけが写し取られているように見える。

「僕は自分のことを建築カメラマンだとは思っていない。もっと映画的なアプローチで撮影している」とボーボは言う。彼は人が学んだり働いたり、遊んだりする空間に興味があるのだ。プール、図書館、遊園地と対象は違っても同じような画面構成とテクニック、色合いで撮るようにしている。

誰もいないように見えるプールの写真はよく見ると、ときどき人影が見える。タイルを磨いているスタッフやロッカールームに向かう利用者などだ。注意深く見ないとわからないけれど、一度その存在に気づいてしまうとその人影は無人の空間との強いコントラストを感じさせる。

ボーボは「完全なイメージを撮ろうとしているわけではない。水と建築と人の関係を撮りたい」とも言う。彼は「ドキュメンタリーや現実と、フィクションの間にあるものを表現したい」と考えているのだ。現実のものを写していながらどことなく現実感のない写真には、水と一緒に人々の感情も漂っているようで、クールな表情とはうらはらな印象も残す。

text: Naoko Aono

「SWIMMING POOL」
会期:開催中〜2015年6月28日
会場:Paul Smith SPACE GALLERY
東京都渋谷区神宮前5-46-14 3F
TEL:03-5766-1788
12:00〜20:00(土日祝11:00〜)
水曜不定休
入場無料

1Georges Vallerey, Paris, 2013
2St Francis College #2, Brooklyn, New York, 2014
3La Butte aux Cailles #1, Paris, 2012
4Chateau Landon, Paris, 2013

© Franck Bohbot