08 9/09 UPDATE
鍋、たわし、まこ、はっちゃん、駅長......と、書店の平台で各種各様のニャンコが日夜しのぎを削って陣地争いを繰り広げている昨今、過熱する一方の「猫本」出版ブームに一石を投じる(かもしれない)異色の一冊がコレ。題して『猫ジャケ』。
スリーヴ・アートに猫がフィーチャーされた古今東西のレコードを集め、並べ、愛おしむ──という、国際的に見ておそらく非常にユニークな内容。「ひとり猫」、「なかよし猫」、「美女と猫」、「紳士と猫」、「絵になる猫」といった項目ごとに並ぶジャケ、ジャケ、ジャケ......ジミー・スミス『ザ・キャット』、フリー・キトゥン『リック!』といった有名猫ジャケから、ムード音楽、歌謡曲、ローカル演歌ロックなど知られざる猫ジャケまで網羅。
あくまで「ジャケ(の猫)優先」のセレクションでありながら、そこはそれ、専門職(レコード・コレクターズ)としての「並べワザ」および、短文キャプションでのレコ紹介は切れ味よし。にも関わらず(?)「猫ジャケに駄作なし」と言い切ってしまう(いいのか?)あふれる猫愛がなんともイイ感じ。
小説家、漫画家に猫好きが多いのは有名だが、ミュージシャンと猫の相性が悪いわけがない──そんな関係性が、ジャケを通じて浮かび上がってくる。なかでも、「猫と自分と音楽」について語る遠藤賢司のインタヴュー(なんと6P)は本書の白眉。歴代愛猫の写真と「純音楽家」の言葉から広がる大宇宙......猫好きの彼女にプレゼントしたら、レコ好きにしてしまえるかも?な一冊だ。
Text:DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)
『猫ジャケ 〜素晴らしき "ネコード" の世界〜』
(レコード・コレクターズ増刊)
発行:ミュージック・マガジン
1,500円[税込]