08 10/10 UPDATE
イングランドは「労働者」。スペインは「農夫」。イタリアは「泥棒」......というのは、各国のサッカー代表チームのキャラクターについての、TVプロデューサー/作家の田口賢司さんの名言。
では、我らが日本代表は?というと、やはり「フリーター」と「オタク」ということなのではないだろうか。顔がそうだし、態度もそうだ。ワーホリもしくは海外青年協力隊的な中澤、独特すぎる波動がアキバに通じるような気がする遠藤、そして、なんといっても、中村俊輔。あれこそが「日本代表」のキャラクターだ。
国際的には高校一年生ぐらいにしか見えないだろう肉体。闘志が前面に出るというよりは、柔和すぎる物腰。それでいて、世界一流のバケモノ相手に互角に戦える男。止まっているボールを蹴ることに関しては、地上屈指のスペシャリスト。そんな彼が、自分を磨き上げ続けるキーワードとしたのが表題の「察知力」。それが豊富な実例とともに語られるのが本書だ。
セットプレーが主体の野球などと違って、つねに「修羅場」なのがサッカーという競技だ。その中では「瞬時に状況判断をして正解を導く」ことだけが勝利への道となる。それが「察知力」。そして、その「察知力」を実践へと繋げるための日々の努力──一般ビジネスマンはもとより、ドシャメシャな進行が日常のクリエイターなら、きっと役に立つキーワード満載。サッカーに興味がない人が読める本なのかどうかはわからないが......。
すこし前、オヤジの居直りを正当化しただけの「鈍感力」なんて言葉が流行った。渡辺淳一の本が流行らせた。それに比べれば、この「察知力」の清々しいこと! 世代を経て日本人は確実に進化している、ということを実感できる、今年を代表するベストセラーの一冊。
Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)
『察知力』
中村俊輔(幻冬舎新書)
777円[税込]