08 10/23 UPDATE
いわゆる「派手なトリック」を決めているスケート写真といったものは、ほとんどない。もっと詩的で、静的な写真集が本書だ。市街地での滑走。高速道路下のスケート・パーク──建設途中で中断させられたもの、完成して使用されているもの。フルパイプへの挑戦。スケートボード倉庫。クリエイター。ヒーロー・スケーター。キッズ。人・人・人。そして「街」──スケートにまつわる様々なシーンが、次々に展開されてゆく。
これは、スケートボード「ジップ・ジンガー」を片手に(もしくは、足元に)、同モデルのオリジンであるカルフォルニアを旅した著者の記録であり、もっと言えば、街と人と人生への賛歌なのではないか。時折挿入される風景写真が、圧倒的に素晴らしい。
スケーターどころか、人っ子一人いない「街の写真」、夕暮れ時の光線が、あらゆるものを逆光の像の中に描き出すような一枚の存在感。つまり、旅人の目線だ。愛すべき人、風景、空気、それらと出会って、次の土地へ。別れたものは、二度と同じ形で再会することはない「けれど」......まさにスケートボードで街をクルーズするような速度で、ささいな(しかし、重要な)感興の瞬間を蒐集し、定着させた写真群が物語る「いまだ美しい世界」への憧憬。
ユニークなアイデアが成功した写真集であり、かの地を旅したことがある人なら、矢も楯もたまらずエアチケットを取りに走りたくなるようなグリップ力がある一冊。序文に寄せられたトミー・ゲレロ御大のファンキーかつ愛情のこもった詩も、ついラップしたくなるような名調子!
Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)
『RIPZINGER WEST AMERICANIZED TOUR』
TOMONORI TANAKA(Stussy Books)
6,090円[税込]
※こちらの商品はhnyee.Storeにて販売いたします。