09 1/27 UPDATE
『1・2の三四郎』『ホワッツ・マイケル?』などの大ヒット作で有名な名人・小林まことが、少年マガジン創刊五十周年を記念して描いた実録マンガが本書。デビュー後の著者本人の自伝的要素を中心に、若き漫画家の「仲間たち」との交流が綴られてゆく。
小林まこと作品を愛読している人ならみんなお馴染みの、「変型した顔」と「無音ながら、異様にビート感がある動き」が満載の、活劇的躍動感に満ちた内容となっている。それだけに、そこで描かれる、第一線で戦っている「プロ漫画家」の日常の凄絶さには、鬼気迫るものがある(平均睡眠時間が週に8時間!)。そして、そこで「戦友」となった者たちの歩む運命......これで泣かなきゃ男じゃない!そんな部分も含めて、実録ながら、日本人が完成させた最強の表現形態のひとつ「少年マンガ」の見事な傑作となっている。
70年前後、最もラディカルに進化した「少年マンガ」は、本書の背景となる時代(78年〜83年)に、大いなる発展を遂げる。一大産業として確立し、その後(80年代中盤以降)の爛熟期を迎えることになる。その「産業」を、筆一本でささえた「若い」漫画家の姿......業種は違っても、クリエイターであれば、そこに胸を打たれなければ嘘だ。ヤングマガジン誌に掲載された、ちばてつやの『トモガキ』も、少年マンガ創生期を描いている、という違いこそあれ、「漫画と友情」を描いたすさまじい一作だった。このような表現者たちと同じ時代の空気を吸っていることを誇りに思える──そんなことを感じさせてくれる、数少ない名著の一冊が本書だ。
Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)
『青春少年マガジン1978〜1983』
小林まこと
(講談社・KCデラックス)
980円[税込]