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B級グルメが地方を救う

B級グルメが地方を救う

日本の真の姿を映すB級グルメのカタログ書

09 3/11 UPDATE

日本国内で旅をする人、とくにビジネス旅行など多い人にとっては、絶対におさえておいたほうがいい一冊がこれだろう。いわゆる「ご当地グルメ」の、その中でも「B級なもの」ーー例えば、富士宮のやきそば、宇都宮の餃子、静岡のおでん、そのほか、いろいろーーを、これでもか!と網羅しつつ、分析したのが本書。

本書が最もすぐれている点は、カタログ情報としてわかりやすい、というところ。類書は世に数多いけれども、頭ひとつ抜けて優秀な点がそこだろう。「地域振興のために」この本が書かれた、というただし書きはありますが、あまり気にする必要はない。というか、なにより「食う」ことこそが真の地域貢献。使いまくるほど味が出る本なのだと思う。そして、食い尽くしたころ、きっとあなたは気づくだろう「B級グルメ」にこそ、日本の真実の姿があったのだ、と。

よく考えてみるまでもなく、伝統的な「日本の食」の中で、国際的に通用したものは「スシ」しかない、といっても過言ではない。海原雄山が言っていることは嘘ーーもしくは、ナショナリストの特異な意見でしかない。現代の都市の実相とは、あらゆる情報が世界中から流れ込んだ上で、庶民が日常的に親しんでいるものの中にこそ潜んでいる。パリにおけるアルジェ移民のクスクス屋、NYのプエルトリコ料理屋、カリフォルニアにラーメン屋のごとく群雄割拠するメキシコ料理屋......そんなものに匹敵する「B級食」が、日本全国で、日夜開発され続けているなんて、素晴らしく勇気づけられる話じゃないだろうか。

いやほんと、「食いしん坊」じゃなくってもバンザイな一冊だといえる。

Text:Daisuke Kawasaki (Beikoku-Ongaku)

「B級グルメが地方を救う」
田村秀(集英社新書)
735円[税込]