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その名のとおり、ロンドンにおける「ロックゆかりの地」を徹底的に収集。写真、地図、イラストつきで紹介しまくった一冊が本書。最初に言っておきますが、これは、すごく「役に立つ」本です。

どういう場所が紹介されているのか？というと、冒頭の一章を割いて、まずは王道「ビートルズゆかりの場所」。アップル・スタジオはもちろん、四人およびエプスタイン家そのほか全17項目。これを小手調べに、以下、クラブ、コンサート・ホールにパブ、ホテルにレストラン、レコード店に楽器店、有名レコジャケ撮影地、などなど、各種「ロックゆかりの地」が満載。なかでも特筆すべきなのが、第二章「ロック伝説／巡礼の地」の項。ロック史における、いろんな「事件」の現場となった地を取り上げているのだが、マーク・ボランが紫色のミニ・クーパーで激突して死んだ「オオカエデの樹」まで載っている（ちなみに、いまでもファンが巡礼して、いろいろと樹に貼りつけています）。コラムも充実しているので、初心者にもわかりやすく、玄人なら眺めているだけで楽しい一冊、といえるのでは。

かつて、80年代ごろまでは、音楽好きのためのNYやロンドン本というのは、よくあった。それが死滅して久しい昨今、本書の意義は高い。いわゆる「普通の」旅ガイド本や、女性誌の旅特集では決してお目にかかれない、「ロックに関連した」かの街の姿だけがここにある。ロンドンに行く機会がある人なら、カバンにこれ一冊、入れておくことをお薦めしたい。

それにしても、「大昔」の伝説の地が、このようにいくつもいくつも、「残り続けている」ロンドンという街の懐の深さには恐れ入る。スクラップ＆ビルドが日常の東京が、何を捨て続けているのか......そんなことまで、考えさせられてしまった一冊。

Text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)