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奇界遺産

奇界遺産

圧倒的なクオリティで綴られた
世界中の「奇妙なる光景」の記録

10 4/20 UPDATE

これはじつにすぐれた一冊だ。いわゆる「世界の変な建物」や「変な街」を撮った写真集は数あれど、これほど広いジャンルで、しかも、圧倒的なクオリティで、世界中の「奇妙なる光景」を見せつけたものはなし! と言い切っていいんじゃないだろうか。
 
まずはその「ジャンルの広さ」。「世界で唯一の洞窟村」と「南米随一のUFO目撃を誇る村」と「無重力実験博士のマンション」と「ボリビアの忍者学校」が一冊の本に載ったことは、これまでになかったのではないか。また「ギリシアのオーパーツ(=現代の学術的には解析不能な失われた文明の遺物)」と、「一軒の小屋だけでいっぱいの南洋の小島」が同じ本に載ることも......こうしたコンセプト、編集術がまずとてもエキサイティングで刺激的。著者いわく「古来、〈芸術〉と〈オカルト〉という一見無駄で余計なことこそが、人間を人間たらしめてきたのかもしれない」。つまり、世界各地に現存する「人間の奇妙な想像力」が形になった光景を撮り続けた、その記録の一群が本書なのだ。著者は超常現象をあつかった人気ウェブサイト「X51.ORG」の主宰者でもあるため、もちろん「エリア51」「ロズウェル」といったメジャーネタも出てきますが、あくまでそれは、「ブータンの魔除けのペニスの家」と同列で。いやはや、ディスカバリー・チャンネルの宣伝文句ではありませんが「世界に感謝!」「人間ってほんと、わっけわからないことばかり考えてる、面白いやつらなんだなあ」と感じてしまった次第。あの漫☆画太郎先生が驚喜の帯コメント&イラストを寄せているのはダテではありません。
 
それにしても、これらの奇界名所(40カ国!)すべてを走破した著者がうらやましい。じつに行ってみたい、いや、住んでみたいところも多数。うーん、自分の想像力のなさと、「世間の知らなさ」をこれでもかと見せつけられるこの快感はひさしぶり。もしあなたが「世界七不思議」的な本に心ときめかせていた子供だった人ならば、迷わず超マストな一冊が本書でしょう。

Text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)

『奇界遺産』

佐藤健寿・著
(エクスナレッジ)
3,990円[税込]