honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

旅行をすれば写真を撮る。当たり前だ。誰もが写真を撮る。そんな私たちと同じように、世界中のストリートで、シャッターを切り続ける渋谷ゆり。だが、そこに描かれているのは、ガイドブックには決して載っていない、彼女にしか見えなかった世界と人々の生活だ。

このフォトエッセイ集は、1996年、ニューヨークで撮られたオーリー（スケーター）の写真から始まる。彼女が旅したニューヨーク、ジャマイカ、エチオピア。旅先で出会ったさまざまな人や場所、そこで生まれたエピソードが、写真とやわらかい言葉で綴られている。

彼女の感情のファインダーを通して登場するストリートの住人。その表情を通して見えてくる街、国、世界。旅の醍醐味は、見知らぬものと自分の出会い、そしてそれによって生まれる自分だけの感情。そう考えれば、この本を読んで得られるのは、ある特別な旅の経験だ。なぜなら、渋谷ゆりがそのときその場所で感じた記憶を、追体験することにほかならないのだから。

Text:Takeshi Kudo (Rocket Company*/RCKT)