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ガラパゴス化する日本

ガラパゴス化する日本

「ガラパゴス化」って何?が嫌というほどわかる解析本

10 5/18 UPDATE

ここのところ新聞・雑誌などでよく目にするフレーズ「ガラパゴス化する××」。それって何なのよ?というのが、微に入り細に入り、嫌というほどわかる一冊。かなり売れています。

さて肝心の「ガラパゴス化」とは、要するに日本というのは特殊な「島国」であり、日本人はその環境でしか棲息できない種(ガラパゴス・イグアナとか)になってしまっている、という論。本書でも語られている「よくある一例」として、日本製の携帯電話は世界最高レベルの技術を投入していたのに──海外じゃ全然売れなかった、とか。世界の家電市場で韓国企業がガンガン伸びてって島耕作が悩む......とかいった事柄について、「それはガラパゴス化のせいだ!」と豊富なデータをもとに喝破するのが本書の第一幕。島耕──じゃなかった「島内」の、のほほんとした市場やら文化/社会状況によって固有の進化を遂げてしまったがゆえ、国際市場のトップ・プレイヤー集団から徐々に脱落していこうとしている日本国と日本人に警鐘を鳴らす!──とまあ、そういった内容。最近よくある国粋主義的なアオリではなく、実証主義的なビジネス分析とマーケティング的発想で、きちんと淡々と「ガラパゴス化」の現状について解析してゆく点は好感度高し。ゆえにちょっと堅くはあるのですが、これさえ読めば、もう俺は「ガラパゴス化」専門家!という気分になれる一冊でしょう。

とはいえ......広い意味での日本の「ガラパゴス化」は、昨日や今日にはじまった話ではなし。だから効果的な処方箋はなく、弊害があるのであれば(本書によると、あるんですが)、ありとあらゆることが出尽くすのは、これはしょうがないことなのだと僕は思う。手遅れというなら、たぶん江戸時代から手遅れだったのでは。その証拠に、元来は最も手っ取り早く「国際標準」の舞台に躍り出るべきポップ・ミュージックが、日本の場合は見事に「ガラパゴス化」してますし、国民の精神的支柱であるはずの日本語文学はもちろん「ガラパゴス」......一部の特例を除いて、みんなそうなっている。頼みの綱のマンガですら、(外国人の学習能力が高すぎるので)この先どうなることやら。僕がわかる範囲では、日本の「ファッション」や「デザイン」に関しては、新たなるユニヴァーサルな規格となり得るポテンシャルが、まだまだざくざくある――ような気がするのですが。そこで提案。だれか「ガラパゴス化」Tシャツ作りませんか? 「Do the Galapagos!」とか「I'm an Iguana Boy」とか、外国で受けると思うんですが。商品化の際はぜひお声をかけてください。

Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)

『ガラパゴス化する日本』

吉川尚宏・著
(講談社現代新書)
798円[税込]