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STUSSY DELUXE × GREENSLEEVESTHE FIRST 100 COVERS

STUSSY DELUXE × GREENSLEEVES
THE FIRST 100 COVERS

グリーンスリーヴス初期の
豊穣な光景をとらえた写真集

10 6/18 UPDATE

ロンドンといえば、レゲエだ。ロンドンにいると、常時、頭のなかでレゲエ・ミュージックが流れつづけるのは、僕ばかりではないはずだ。じゃあ「それはどんなレゲエなのだ?」と問われれば──まあもちろん、その答えはいろいろあるのでしょうが、おそらくそんな場合に、もっともプロパーな答えのひとつとなるのが「グリーンスリーヴスがリリースしたもの」なのではないだろうか。いちばんストリート寄りで、いちばん幸福で、そして、ロンドン・パンクが大爆発したとき、その真横に位置しながら、でっかいビートを鳴らしつづけていたレーベル──それがグリーンスリーヴスだ。その歴史の、もっとも初期の豊穣な光景をとらえた写真集が本書である。

本書はまず、75年に「ロンドンの横町のレコード店」としてスタートしたグリーンスリーヴスのショットから幕を開ける。本編の三分の二を占めるのは、タイトルにもあるとおり、レーベルがリリースしたアルバムを、レコード番号1番から100番まで、順に「現物」を撮影した写真だ。しかし、その「本編」に入るまでの、前半の三分の一にあたるインタヴューのパートこそが肝心だ。レーベル創始者であるクリス・セジウィックとクリス・クラックネルへのインタヴュー、スリーヴ・デザイナーのトニー・マクダーモットへのインタヴューとあわせて、アーティストのレア・ショットなどなど、どんな時代の空気の中で、グリーンスリーヴスが発進し、発展していったのか、飾らない言葉とヴィジュアルで追体験させてくれる。なおかつ、序文は元ザ・クラッシュのポール・シムノン。これで血がたぎらねばどうかしている。ドクター・アリマンタード! オーガスタス・パブロ! バーリントン・レヴィ! イエローマン!──と、アルバム・スリーヴ写真を眺めながら叫んでいる自分を発見しても、おかしくはない。

グリーンスリーヴス黎明のころ、この時期のレゲエは、ルーツからダンスホールへと、そのモードがおおきく変化していった。その変化は同レーベルのリリース作にも如実に反映され、そしてそれは、言わずもがなで、ザ・クラッシュおよびそのほか一部のパンクロック・バンドに甚大な影響をあたえた。もちろん、未来の英国DJシーンにも。要するにこれが、「このような形の影響があった」ことこそが、イギリスのポップ・ミュージックと、「それ以外の国のもの」との最大の違いのひとつなのだと僕は認識している。レゲエのレコードを聞きながらベースの練習をしたというポール・シムノンはうまくはなれなかった。しかし、ジャマイカ人をして「ジャマイカ人のように弾く」と褒められるベース・プレイヤーとなった。このことの歴史的意義は、とてつもなく、おおきい(それはランシドなどを見ればわかる)。

ステューシー・デラックスからのリリースとなる本書は、著者によるグリーンスリーヴス音源ミックスCD、グリーンスリーヴスTシャツなどとともに発売されている。ところでみなさん、同Tシャツ用のフォト・セッションに「こどもクラッシュ」の面々が動員された事実をご存知か? ミック、ポール、ジョー、そしてドン・レッツのこどもたちが、それぞれ「父親たちが愛した」グリーンスリーヴス作品のスリーヴ・アートがプリントされたTシャツを着ている姿は、ちょっとこれは、感動ものだ(ステューシーのウェブサイトでその一部を見ることができる)。まるで父のクローンではないかと思うほど似ているポールご子息二人もいいのだが、ジョーのご息女がとにかくすばらしい。やはり父にすごく似ているのだが、さらに繊細で、うつくしい。おそらく彼女がTシャツの上に着用しているのは、父の形見のライダーズ・ジャケットだろう。地球上の全クラッシュ・ファンはこれを見逃してはいけない。

グルーヴという言葉には「轍」という意味がある、ということを、ひさしぶりに実感させられた一冊であり、キャンペーンがこれだった。東京にいながら、頭のなかだけはロンドンになって、いまもグリーンスリーヴスのレゲエが流れつづけている。

Text:DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)

STUSSY DELUXE × GREENSLEEVES
『GREENSLEEVES THE FIRST 100 COVERS』

AL FINGERS・編
(STUSSY DELUXE)
8,190円[税込]

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