honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

「巨大仏!!」

「巨大仏!!」

日本各地に点在する超巨大仏像の数々をひたすら撮りつづけた写真集

10 8/24 UPDATE

世界初の企画なのだという(そりゃそうだろう)。本書は、なぜか日本各地に点在する超巨大仏像の数々をひたすら撮りつづけた写真集だ。

まずは、その写真術を評価したい。「とにかくでっかい仏像」が、日常の風景のなかにある、という、どうしようもない「違和感」が、すべての写真に通低するテーマとなっている。ときにそれは、ユーモラスであり、ときに軽くショッキングだったりもする。それが全28体、民家の屋根のむこうに/道路を見下ろすように/山のなかにこつ然と──偉容をあらわすその様は、超現実的であり、同時にこれこそが、「いまのニッポン」の風景なのだなあと納得させられるものがある。

ちなみに、本書で挙げられた「巨大仏」の基準とは「ウルトラマンよりも大きいこと」だそうで、それ以下のサイズは「プチ巨大仏」となるそうだ。また、各巨大仏ごとに「鎌倉の大仏(13m)を縦に積んで何体ぶんとなるのか?」というイラストがバロメーターがわりに掲載されているのもわかりやすい(?)。なんでも、日本最大の巨大仏は茨城の「牛久大仏」(120m)だそうで、このサイズともなると、鎌倉の大仏が手のひらに乗るはずなのだという。

巨大仏関連の書籍では、宮田珠己さんの『晴れた日は巨大仏を見に』が、本書に先行するものとしてあった。同書は論考およびエッセイが中心だった。であるから、本書はただただヴィジュアル・ショックを追い求めるという姿勢を貫徹させて、先行書との差異化に成功したといえるだろう。僕は地上波を観ないためよくわからないのだが、著者は放送作家として成功しているかたなのだという。正常な美意識からはおおいに逸脱したこれら巨大仏を、風景の一部の「珍なるもの」として認め、愛でるようなこの視線は、著者がテレビの現場から得たものなのだとしたら、この点も、日本的で、面白い。

本書に追随できる企画を僕は思いついた。それは「巨大仏の空撮」だ。できれば動画がいい。リオデジャネイロのコルコバードの丘のキリスト像(30m)が、いつも頭上から空撮されているように。その映像こそが「リオの象徴」のひとつとなっているように。日本全国の巨大仏を「さらに高い位置」から眺めることで、よりいっそう、この日本という「珍なる国」がよく見えてくるのではないか、という気がした。

Text:DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)

「巨大仏!!」
中野俊成・著
(河出書房新社)
1,680[税込]