11 11/28 UPDATE
人はだれでも悪癖がある、という言い訳から、この原稿を始めてみようか。奇書、悪書、珍書というものに、なぜか無闇に惹かれてしまうという性質が僕にはある。小学生のころ、UMA関係および五島勉のノストラダムス本を読みすぎてしまった後遺症なのかもしれない。
というわけで、「まともな人なら」決して相手にしてはいけない、「トンデモ陰謀論」界の巨匠、最新の一冊がこれなのだが......じつに楽しく読んでしまった。子供にもわかりやすいような図解調であるところが、まずポイントが高い。歴史上の偉人の写真が並び、そこに「対立」などを意味する図形や線が加えられて、ページ下部にて解説、というフォーマットで、「闇の組織・イルミナティ」が、いかに人類史を揺り動かすような陰謀や暗闘を繰り広げていたのか、一目で知ることができる。ちなみに「イルミナティ」というのは、この界隈では有名な秘密のネットワークで、ロックフェラー家やロスチャイルド家やブッシュ家、米連邦銀行からローマ法王までもが加わった「闇の支配者」たちのことです。
彼らは地震兵器を使い、新型伝染病を流行らせ、有色人種を支配しつつ減らして、世界新秩序を確立するために9.11を自作自演、UFOももちろん飛ばしている......というところで、かつて当欄で僕が取り上げた一冊との類似性を、ぜひ思い出していただきたい。副島隆彦の『世界権力者 人物図鑑』──ラムズフェルドを「悪の元締め」、アーミテージを「麻薬王」呼ばわりしていた、あの本ですね(そういえば、同書によると、今年じゅうにオバマは退任することになったいたのだが......)。あちらを楽しく読むことができた人ならば、そのよりハードコアな(ファンキーな?)ヴァージョンとして、本書もいけるのではないか。
と、内容および著者の世界観とは距離をとりつつ記述してみたのだが、僕はふと思う。3.11後の、まさに筒井康隆調スラップスティック以上の痴態が繰り広げられているこの国の現状を、陰謀論的視点なくして、どうやって理解することが可能なのだろうか、と。全官僚と全閣僚、全大手マスコミ、経団連と電力会社は、じつはみんな全員、ベンジャミン・フルフォードの愛読者であり、信奉者もであった──としてくれたほうが、まだ納得もできるのではないか。陰謀だけで生きていることは確かなのだから。嘘しか口にしていないのだから。
そういった意味で、いま現在眺めてみると、意外にスリリングな一冊と言えるのかもしれない。
text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「図解 世界『闇の支配者』」
ベンジャミン・フルフォード著
(扶桑社)
1,575円[税込]