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骨から見る生物の進化【普及版】

骨から見る生物の進化【普及版】

知的刺激と、美的興奮に満ちた動物の骨格の写真集

11 12/20 UPDATE

原題は『Evolution』だから、そもそものコンセプトは、「見てよくわかる進化論」という切り口の生物学書籍、だったのかもしれない。「かもしれない」などと僕がここで言うのは、これは、あまりにも、「お勉強」という言葉からかけ離れた知的刺激と、美的興奮に満ち満ちた一冊となっているからだ。心の底から「美しい」と溜息をつきたくなる「骨の写真」だけが、つぎからつぎに、山ほど載っている。あらゆる動物の「骨」が、黒バックにくっきりと白く浮き上がって、掲載されている。その総数、200点。写真集だと考えてみても、この充実度とクオリティは、ただごとではない。

本書に収録の写真、その最大の特徴は「CGではない」ということだ。動物の骨格の実物を、「生きて動いていたときのような状態」にして、それが撮影されている。つまり、骨だけの馬が走り、骨だけの蛇がとぐろを巻いて、骨だけの鳥が飛んでいる――という写真群を、想像を絶する努力のもと、実現させているのである。ここは最上級の敬意の表現として「変態すぎる」と言わせてもらいたい。著者のパナフィユーがパリ生まれのせいか、ちょっとほかの文化圏(米英やアジア)では、決してだれも手を出さないような、ぶっ飛んだアイデアが結実した書籍だと言えるのではないか。

たとえば本書は、冬の夜長に、エスプリたっぷりのテキスト含めて、じっくりと楽しむのにいいだろう。画学生およびデザイナーは必携だろうし、「とにかくドクロが好き」だという人は、これ持っていなきゃまずいでしょう。ちなみに、僕が最も好きだったのは、第三章「誘惑と淘汰」内の「武器と装飾」の項、立派な角をそなえた頭骨がずらっと並んでいるページだった。

text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)

「骨から見る生物の進化【普及版】」
ジャン=バティスト・ド・パナフィユー著 
小畠郁生・監訳&監修 グザヴィエ・バラル 編集 パトリック・グリ 写真 吉田春美・訳
(河出書房新社)
4,095円[税込]