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日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

いびつな「日本の著作権システム」の深い闇を斬る、必読の解説書

12 2/06 UPDATE

素晴らしい、と言うほかない。こんな本は、これまでに、なかった! 本書はタイトルのとおり、明確な問題意識から「日本の著作権システム」のいびつさについて一刀両断にしつつ、「基本的なお勉強にもなる」という一冊。権利者を擁護するためならまだしも、ときに権利者ですらひどい目に合う(ひこにゃん、キャンディ・キャンディ、宇宙戦艦ヤマト)のが日本式で、まさに原子力ムラのごとき利権構造が官僚と「諸権利にまつわる団体」のあいだに張り巡らされている、という奇怪が、筆鋒もするどく論じられる。著作権法の改正を話し合うべき文化審議会著作権分化会が「どんな顔ぶれ」によって、「どんなふうに」進められているのか、ということが、(なんと!)全部実名入りで詳細にレポートされるのだからたまらない。

日本の著作権法は厳罰化の一途をたどっていて、いま著作権侵害をすると、個人なら「十年以下の懲役」もしくは「千万円以下の罰金」で、法人なら「三億円以下」である。だからもし、これを読んでいるあなたが著作権侵害をしてしまったら、大変だ。一生を棒に振ってしまう、かもしれない――にもかかわらず、日本の著作権法について解説されている書籍は、その大抵がきわめて「出来が悪い」。その理由は、「これが法律だから、従え」ということだけを、なにも考えずに伝えようとするから、失敗をするのだ。本書の「わかりやすさ」は、その真逆にある。そして僕が実感したのは「ああ、だから日本のコンテンツ産業は、だめになったのだな」ということだ。連戦連敗、ミッドウェイ後のインピーリアル・ネイヴィーもかくや、とでもいうような。

たとえば、かつての「CCCD(コピーコントロールCD)」騒ぎ。「Respect Out Music」と書かれたポスターが街にあふれた。あわれにも、ポスターにはミュージシャンの写真が使われていた。消費者イコール、潜在的な盗人(著作権侵害者)と見なす「団体」が、ナップスター・ショックに過剰反応して、結果、日本の音楽産業に回復不能の打撃をあたえた事件として、僕は記憶している。あのとき違う反応をしたアメリカでは、昨年、ネット配信での楽曲売り上げがパッケージを超えた。さらにはついに、総売り上げ点数が前年比プラスへと反転したそうだ。そこにフロンティアがあれば、彼らはかならず新ビジネスを確立する。そのために、法律を整備する。どこかの前近代的な国とは違って。

あなたが「利権ムラ」の一員でないのだったら、「最高。読んだほうがいい」と言い切れる一冊だ。

text: Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)

「日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか」
山田奨治・著
(人文書院)
2,520円[税込]