12 2/14 UPDATE
これはちょっとした掘り出しもの、なのではないか。「パンチカラー」というのは、本書の造語であり、要するに「パンチがきいた色」ということだ。一般的には、ベーシックカラーに対する「差し色」とされるもののなかで、きわめてヴィヴィッドで、強烈な感動、印象、刺激、迫力を与えうるカラー──というのがその定義となろうか。つまり、「ベーシックカラー」のトーンと組み合わせによって、なにが「パンチ」となるかが、変化する。デザイナーによってもそれは変わるのだろうが、まずなにより、その彼や彼女が「居住する地域」の文化や気候風土によって規定されるもののはずだ......という、きわめて正しい直感にもとづいて、本書では、「パンチカラー」を巡る世界の旅が、30カ国ぶん、収録されている。これがじつに楽しい。
たとえば、パリのポンピドー・センターの「パンチカラー」があり、バチカンのシスティーナ礼拝堂がある。僕はロンドンのニールズ・ヤードの「パンチカラー」を見ると、ああ自分は本当にかの地の「それ」が苦手なのだなあ、と実感するし、日本編の能の連獅子舞台の色組みには、永谷園のお茶漬け海苔を思い出さざるを得ない。というそれぞれの「パンチカラー」について、左ページにはその対象の写真が、右ページには解説が掲載される、という作りが、ひじょうにいい。もっともキラーなのが、右ページ下部に、配色の説明としてカラーチャートが掲載されているところだ。CMYKとRGBによる指定もついている。
というわけで、デザイナーのアンチョコとしても、結構使える本なのではないか。または、えいやっと適当に開いてみては、「色による世界旅行」と洒落込んでみても、いいかもしれない。唯一の問題は、長時間ページを繰り続けると、目がハレーションを起こしそうになるところ......なのだが、そういった刺激がお好きな人にこそ、こたえられない一冊かもしれない。
text: Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「世界のパンチカラー配色見本帳」
橋本実千代 城一夫 ザ・ハレーションズ 共著
(パイインターナショナル)
2,940円[税込]