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1981年から82年にかけて、角川書店から発行されていた全10巻の「全集」、その見事なる復刊がこれだ。ピーナッツ・コミックスのファンであれば、見過ごすことのできない全集がこれだった。なぜならば、収録されているその内容がすごいからだ。
ピーナッツ・コミックスの日曜版がここに集められている。4コマの平日版ではなく、ここではたとえば8~9コマにタイトル・コマ付きのものが、見開きで掲載されていたりする。カラーも豊富だ。そのカラーの色味が、これまた素晴らしい。表紙を並べてみて、僕は幼児じみた黄色い歓声を上げたかもしれない。この色、この線。これぞまさしく「古着屋のスヌーピー」だ。70年代、プリント技術の発達により、ウェアや雑貨の上につぎつぎにその姿を刻印されはじめていたころのフォルムで、色で、ピーナッツ・キャラクターたちがここにいる。70年代のアメリカで呼吸していた彼らがいる。
この全集には、1971年から80年までの作品が収録されている。この期間の「すべての」日曜版が収録されている、ということを特筆しておきたい。角川版が出た当時、アメリカにおいてすら、この期間の日曜版をすべて収録したシリーズはなかった。この全集では、71年ぶんを収録した第一巻を皮切りに、それぞれの巻に一年ぶんが収録されている。翻訳は谷川俊太郎。「最近ではめずらしい」とのことらしいのだが、正しくここでは、フキダシのなかに手書きの日本語、コマの脇に原文の英文というスタイルでまとめられている。巻頭の登場人物紹介、巻末の読み物とあわせて、ツル・コミック版や、同社から発行されていた『月刊SNOOPY』とも近い感覚を僕はかんじる。2013年2月に全10巻が出そろうようだ。その全部を納めることができる「10巻収納BOX」が、シンプルな発想ながらまた物欲を刺激させられる。
ウェス・アンダーソンの新作『ムーンライズ・キングダム』にいまいち僕は乗れなかった。その理由がなにだったのか、この全集を読んでいてようやく自覚することができた。「カーキ・スカウト」なんて設定、とてもじゃないがいただけない。なぜなら僕は、ずっとむかしから「ビーグル・スカウト」のファンだったのだから!
text: Daisuke Kawasaki (Beikoku-Ongaku)
「スヌーピー全集 《全10巻》」
(2013年2月中旬完結)
チャールズ・M・シュルツ著 谷川俊太郎・訳
(復刊ドットコム)
各 1,680円[税込]