honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

東京フールズゴールド

東京フールズゴールド

川崎大助による初の長篇小説となる、至極の青春音楽エンターテイメント

13 10/02 UPDATE

ハニカムの書評欄でもおなじみの川崎大助は、「ロッキング・オン」で音楽ライターとしてデビューした後、90年代渋谷系ブームの一翼を担った音楽誌「米国音楽」の創刊、伝説のバンド「フィッシュマンズ」の評伝である「フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ」の執筆など、移り変わる音楽業界を、常にインサイダーの視点で捉えてきた。2010年からは、文芸カルチャー誌「IN THE CITY」へ短編小説を寄稿し作家としてのキャリアも重ねていたが、今回、自身初の長編小説となる「東京フールズゴールド」を上梓した。

タイトルは、ザ・ストーン・ローゼスの名曲からの引用。主人公・狛方丈二(こまがた じょうじ)は、元ロックスターにして現在はレコード・プロデューサー、そして自称「詐欺師」の三十六歳。アル中でヤク中、自己中でしかも破産寸前の彼が、人生の崖っぷちで、最後にでっかいヤマを踏む。ターゲットは業界No.1 のレコード会社 「アヴィエイター・エンタテインメント」。「架空のバンド」をデッチ上げて契約金三千万を搾取、そのカネで丈二が「取り戻したい」ものとは???

業界ゴロ、芸能やくざ、いかさま不動産業者、ネット界の超人DJ、レコード探偵、美少女モデル、旧ソ連軍医、外国人犯罪者などが入り乱れて騙し合う......そんな夜の果ての旅の彼方でピカッと光る「愚者の黄金」とは? 2000年代半ばの東京、現実と酷似した音楽業界の内幕を出発点に、狂おしい熱情が真夏の大都会を駆け抜ける、コン・ゲームとアクション、音楽も満載の「崖っぷち」青春エンターテインメント。

著者自身の音楽体験、駆け抜けた音楽業界を、インサイダーでパーソナルな記憶と視点を通過して再生された、あの時代の空気。まるで、読むひと自身の疑似体験として時代を駆け抜けるような、疾走感のある長編小説だ。

text: Akihiro Hayashi

「東京フールズゴールド」
川崎大助・著
(河出書房新社)
1,995円[税込]