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Cat Food for Thought

Cat Food for Thought

キャットフードの商品ラベルデザインをコレクトした、グラフィック本。

14 11/12 UPDATE

贈り物に最適、と、まず言わねばならない。B6判ほどの大きさ、絵本状のつるりとした表面感のハードカヴァーに収められた、フルカラーの全124ページ。どんな人への贈り物に、ということについては、ほとんど悩む必要はない。よほどの猫嫌いでないかぎり、あるいは、よほどの「いいデザイン嫌い」でないかぎりは、贈られてがっかりする人を想像してみることすら難しい。そんなよく出来た一冊が本書だ。

キャットフードの商品ラベル、そのグラフィックのなかでも秀逸なものを集め、すっきりしたレイアウトのなかで紹介していく、というのが本書の内容だ。フリスキーズのキッドニー・フレイヴァー缶が最初に登場してくる。あざやかなピンク地に描かれた白猫の右耳のあたりに「NEW」と文字がある。この缶がまだ新商品であったころ、つまり「現在よりもずっと前」、だいたいは1950年代から70年代あたりまでの、ヴィンテージなラベルが本書でフィーチャーされている、という恰好だ。カラフルなそれらのグラフィックは、ときにウェルデザイン、ときに素朴な愛らしさで、目を楽しませてくれる。それぞれのグラフィックは一見開きごとにひとつ配置されていて、そこに短い文章が添えられている。ひとつのグラフィックに対してひとつずつ、有名人から読み人知らずまでの、猫にかんするちょっといいクォートが掲載されているわけだ。僕が最も感銘を受けた猫缶(のデザイン)は、キャップン・キット(Cap'n Kit)のものだ。片目に眼帯のキジトラ以下四匹の手下を従えた白猫の船長が望遠鏡を片手に帆船の舳先に立っている、という図だ。

著者のひとり、ウォーレン・ドッツ氏は、ポップ・カルチャーの歴史家およびコレクターとして、これまでに何冊も、モノやパッケージ・グラフィックにかんする著書がある。そんな彼が、選びに選んだ「いいラベル」のいい猫が、これでもかとあなたに微笑みかけてくるわけなのだが、これは逆を返せば、こういう意味になる。本書に満ち満ちている多幸的なイメージの数々からは、こんなことが伝わってくる。

我々人類は、ことほど左様に、そこまでも純粋に、幾度も幾度も「幸せで健やかな猫と、仲よく末永く」一緒に過ごしたいと願いつづけている生き物である――ということが、如実に浮き上がってくる。その切実さは、容易に、あっと言う間に、愛おしむべき「温かさ」へと転化していく。この「温かさ」ゆえ、本書は贈り物に向いているはずだと僕は考えた。

というふうに書いていくと、犬好きはどうすればいいのか、そっちはどうなのだ、と怒っている人の声が聞こえてくるような気もする。が、犬派も怒る必要はない。同じ著者が同じ趣旨で「ドッグフードのラベル」を対象とした一冊があるので、そちらをチェックしてみてはどうか。書名はもちろん『Dog Food for Thought』だ。

text by DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)

「Cat Food for Thought」
Warren Dotz, Masud Husain・共著
(Insight Editions)洋書