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またストーンズか、という声が聞こえてきそうだ。この「また」にはふたつの意味があるだろう。お前は性懲りもなく、「また」ストーンズの写真集について書くのか、という意味がひとつ。もうひとつは、「また」ストーンズの写真集が出るのか?という、シンプルな驚きも......なにしろ昨年はアルバム・デビューから50周年だったのだ。これほどのバンドが、50年以上ものあいだ、存続していたのだ。だから写真集なんか幾らでも出来るだろう? ただし――と、僕は思う。ただしそれは、本書が出るまでのことだ。「決定版」とは、まさにこんな一冊を指す言葉だろう。
写真集、ヴィジュアル・ブックには定評があるタッシェン社が、総力を結集して作った、と言っていい、全500ページ・オーヴァーの見事なる一冊がこれだ。まず、バンド側が全面協力したオフィシャル・ブックでもある、という点がとても大きい。よって本書は「これまでにストーンズを撮ったことがある」綺羅星のごとき名フォトグラファーの作品を集めて並べることが可能となった。つまり、デーヴィッド・ベイリーの、ピーター・ビアードの、セシル・ビートンの、アントン・コービンの、アーニー・リボヴィッツの、ヘルムート・ニュートンの、ノーマン・パーキンソンの撮った「ストーンズ」が一冊の中に並ぶ、ということだ。未公開ショットも山盛りだ。60年代のオフ・ショット(プールサイドでの水泳パンツ姿まである)、あるいはジャケット写真のアザー・ショットも多数、あの「72年」ツアーの模様だって......そんなマテリアルが、正方形にも近いこの判型の中で、絶妙な編集とデザインのもとに収録され、歴史という名の、過ぎ去っていった時間のストーリーを形作っていく。この手腕がまず非凡だ。たとえばストーンズの写真が掲載された印刷物の一覧ページを一目見てみればいい。「これほどの」素材を集めつつ、「これほどまでに」美しくレイアウトできた例を、ひとつとして僕は知らない。だから本書は、50年に一度ではなく、100年か200年に一度の一冊なのかもしれない。言い忘れていたが、巻頭にて序文を寄せているのはビル・クリントンだ。そう、ヒラリーの夫で、第42代の合衆国大統領だった彼だ。つまり本書は、やはりビル(もヒラリーも)が登場していた、マーティン・スコセッシ監督が撮ったストーンズのコンサート映画『シャイン・ア・ライト』と同列に論じられるべき性質のものなのだろう。
ローリング・ストーンズ最大の功績のひとつは、「ロックンロールはかっこいい」ということを、つねに「視覚的な側面でアピール」し続けてきてくれたことだ、と僕は考えている。そのかなりの部分を見てとることができる、会心の一冊がこれだ。
text by DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)
「Rolling Stones」
Reuel Golden・編
(Taschen)洋書