15 5/08 UPDATE
もちろん最初は抵抗があった。ニャンダフル、とまで言われて、それを手にとってしまったら負けなのではないか、とすら思った。そして僕は、負けた。愛情あふれる、楽しい一冊だ、と言わざるを得ない。猫そのものへの愛情はもちろんとして、「猫の本」を作る人、売る人、それを読む人たちのあいだに広がる文化ぜんたいを慈しんでいるところ――これが本書の最大の美点だ。
神保町の交差点近くにある姉川書店の中には、猫本専門の「にゃんこ堂」なる書店がある。同店のセレクションによる「猫にかんする本」100冊が本書の中で紹介されているのだが、「にゃんこ堂」の猫店長のリクオくんがコメントも寄せている、という作りだ。猫が紹介する猫本、というのは、たしかに新しい。しかしこういう擬人化は、どうなのか。なぜに日本人はこれほど頻繁に「猫の写真」に適当なコメントつけて、あたかも猫が喋っているかのようにして、擬人化したがるのか......など、ぶつぶつ言いながらも、ページを繰る手が止まらなかったことをここに告白しておこう。
全ページ、カラーというのもいい。書影だけでなく、本文ページも見せながら紹介されている、というところもいい。さらに言うと、写真集、小説、エッセイそのほか「猫の本だけで100冊」という、かなり狭いセレクションでこれだけのページ数を保たせるというのは、かなりすごい。ひとえにリクオくんの選書眼のお陰......かどうかは置いておいて、きめ細かい編集センスが光る一冊だということは間違いない。まさに、ニャンダフルだ、と賞賛されるべき良書だろう。
かつて「猫ジャケ」というブームがあった。その先駆けとなったのが『猫ジャケ ~素晴らしきネコードの世界』という書籍で、僕はそれを当欄で紹介したこともある。あのときと同様、猫カルチャー界(というものがあるならば)に新たなエポックを生み出しかねない一冊が本書なのではないだろうか。
text: DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)
猫本専門 神保町にゃんこ堂のニャンダフルな猫の本100選
宝島社
1,512円[税込]