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『SAPEURS』『FASHION TRIBES』

『SAPEURS』『FASHION TRIBES』

ファッションの辺境で同時多発する“ファッションルネッサンス”

16 7/29 UPDATE

コンゴ共和国の首都郊外バコンゴ地区を中心に活動する「サプール」は、「エレガンスこそすべて」を信条とし、ビビッドカラーのスーツに身を包みエレガントに振る舞うおしゃれな紳士集団だ。彼らをいわゆる消費主義に牽引されたムーブメントと捉えるなかれ。ステータスシンボルとしてのハイファッションと、かつては植民地政策下にあった貧しい地域で暮らす彼らの環境との経済的矛盾。コントラストが際立つその表現は示唆に富んでいる。ミラノを拠点に活躍する写真家、ダニエーレ・タマーニが彼らを捉えた写真集『SAPEURS』は瞬く間に世界中で賞賛され、彼らはグローバルな存在になった。

そして著者は、その続編といえる写真集『FASHION TRIBE』を発表。長らくファッションの辺境とされていたアフリカ地域や中南米、東南アジアで局地的に、サプール以外にも"ファッションルネッサンス"が発生しているのだという。南アフリカのファッション集団「スマーティーズ」やストリートダンサー「ヴィンテージ・クルー」、セネガルのナイトライフを彩る「グザリー・ファッション」、ブランドロゴ全盛でタッキーファッションあふれるキューバ・ハバナのストリート、伝統的な衣装でレスリングをするボリビア女性「フライング・チョリータス」、ミャンマーの「ビルマ・パンクス」、ボツワナの「アフロメタル」......。

7カ国に渡る取材から見えてきたものは、西洋ファッションのコピーではなく、それぞれが独自にツイストさせたローカルなカルチャーだ。まるで自由を手に入れたと言わんばかりに彼らはみな躍動感があり、ファッション的悦びが全身から滲み出しているが、写真に添えられた被写体からのメッセージはなかなかシリアス。大切なのは何を着るかではなく、どんなスタイルを持つかということ。アイデンティティを表明する装いにかけた熱量まで、たっぷりと伝わるドキュメントとなっている。

text: Chiho Inoue

『SAPEURS THE GENTLEMEN OF BACONGO』
ダニエーレ・タマーニ
序文:ポール・スミス
2,300円+税
(青幻舎)
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『FASHION TRIBES GLOBAL STREET STYLE』
ダニエーレ・タマーニ
序文:ロザリオ・ドーソン&アブリマ・アーウィア
3,200円+税
(青幻舎)
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