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JIRO KONAMI: GIMATAI

JIRO KONAMI: GIMATAI

写真家・小浪次郎が撮り下ろした沖縄の旧車會。

16 10/19 UPDATE

原宿のBOOKMARCのエキシビジョンで写真と動画を見て、とても強い感銘を受けた――より正確に言うと、度肝を抜かれた――のだが、写真集になったものも素晴らしく、だからそれをここで紹介したい。

この写真集の被写体とったのは、「GIMATAI」と名乗る沖縄の集団だ。彼らは旧車會だ。だから古い国産のオートバイを駆る。で、それで激烈なウィリーを決める!のだ。ほぼ直角ではないか、というほど前輪を上げることなど朝飯前、そのまま制止したり、数台が横に並んで走行したり......といった、ほとんどバイク・スタントの範疇に入りそうな技を繰り出しつつ、突き刺さるような眼光でレンズを睨むのだから――たまらない。

そして本書を、ここにおさめられた写真を一級品に仕上げたのは、気鋭の写真家・小浪次郎と、版元となったブランド BlackEyePatch だ。だから、構図も、色彩も、乱舞する光の反射にも、きわめてシャープな切れ味が見てとれる。70年代からこっち、走り屋各種をとらえた写真集は数多くあった。その一部が海外のアート・ファンに人気となった、こともあった。しかし本書は、それら類書とは根本的に異質なものだ。なぜならば本書は「族を撮った(だけの)写真集」ではなく、「荒ぶるエネルギーをとらえきった」アートとして見事に成立しきっているからだ。

たとえば、こんな例を想像してみてほしい。ニコラス・W・レフン監督の映画『ドライヴ』のようなカメラ・ワークで、ストリート・ライフのドキュメンタリーを夜間撮影したら......こんなふうになる、こともあるかもしれない。改造バイクと肉体が猛速度で、かつ、ぎりぎりのバランスの上で、「夜」を切り裂いていく様は、美しいとしか言いようがない。スプリングスティーンの初期作品の一部、モンテ・ヘルマン監督の『断絶』のシーンなどにも通じる、闇のなかにしかない硬質な美しさが、本書のなかには閉じ込められている。

そんな一冊なのだが、一般書店では手に入れにくいかもしれない。ご興味があるかたは、原宿のBOOKMARC店舗、もしくはBlackEyePatchのサイト(※※注)をチェックしてみてください。また、写真集の収録作では(美的効果を狙ったのだろう)夜間走行のシーンが主だったのだが、動画のほうは日中に撮られている。こちらもかなりすごいので、機会があったらご覧ください。思わず真似したくなるはずだ(できるわけないのだが)!

text: DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)

「JIRO KONAMI: GIMATAI」
小浪次郎 著
(BlackEyePatch)
7,000円[税抜]