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『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

下品をはっきりと極めながら、
下品とは程遠い印象をあとに残すまたとない作品。

08 4/08 UPDATE

とにかくやっちゃいけないことばっか。基本、下ネタだし(笑)。まあ、ここまで下品をはっきり極めた映画もさほどないだろうが(凡百のZ級映画より遥かにね)、しかし下品とは程遠い印象をあとに残す映画もまたとない。

物語自体は親子三代に渡るなんとも妙としかいいようのないハナシ。ちなみにこれはハンガリー映画なので、その国家の時代背景が暗喩的に背後にあるのかも知れないが、まぁ、そこのところはこだわっても無視してもいい感じだ。

まず一代目は第二次大戦中の、どこだか判らぬ駐屯地で、上官にコキ使われながら酷使される鶏ガラのような一兵卒。というか……とにかくこの男、24時間性欲まっしぐら (笑)。おそろしく直截的、かつ爆裂的にイマジネイティヴな描写も含め、これほど「自慰」というものが徹底的に展開された映像もまたとあるまい。

二代目はうって変わって超巨漢。共産主義国家の庇護するスポーツとして「大食い競技」が行われていた時代の(という設定だ、多分架空の)アスリートなのである。とにかく肥満しきった肉体たちが、吐く吐く吐く(笑)。これって特撮?……どうなんだろ。とにかく先代とは別のところで肉体の限界を目指すのだ。

で三代目だが、これがタイトルにある剥製師。これまた骨と筋だけのような男で、肉体というより肉塊のようになって生きながらえてるオヤジに罵倒されつつも、自らの肉体的トラウマの芸術的帰結を静かに、着実に極めるのである! つまり自らのスタジオで(マイケル・ジャクソンのポスターが貼られてあったりするのがいい)自らの肉体を……って、まあ、あとはどうぞケケケと笑いながらでも吐き気をこらえながらでも観てください。

監督パールフィ・ジョルジは前作『ハックル』も超絶的に面白かったが、あれがモロにデイヴィッド・リンチを想起させたとすれば今回はさしずめマカヴェイエフかブニュエルか。ともかくそこらへんの、もったいぶった、映画祭御用達の、頭でっかち爆睡覚悟なアート系映画とはまったく違う、でもやりたいことやっちゃってる作品なのであります。なんとNHKが出資してるんで驚くが、知らぬ存ぜぬしてるのもよぉぉぉぉぉく判る近年屈指の怪作!!。

Text:Milkman Saito

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

監督・脚本:パールフィ・ジョルジ
原作:パルティ・ナジ・ラヨショ
脚本:ルットカイ・ジョーフィア
出演:ツェネ・チャバ、トローチャーニ・ゲルゲイ、 マルク・ビシュショフ、コッパーニ・ゾルターン、シュタンツェル・アデール、ヘゲドゥーシュ・デー・ゲーザ
配給・宣伝:エスパース・サロウ
2006/ハンガリー=オーストリア=フランス
上映時間:91分
原題:TAXIDERMIA

http://www.espace-sarou.co.jp/
taxidermia/index.html

2008年3月、シアターイメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー