08 5/19 UPDATE
76年、マンチェスターにおけるセックス・ピストルズのライブに触発された4人の若者により結成されたバンド『ジョイ・ディヴィジョン』。ダークでカオスに満ちたサウンド、そして痛々しいまでの絶望と孤独を歌うボーカル、イアン・カーティスの強烈なカリスマ性は、長い不況に鬱屈していた当時のイギリスの若者から熱狂的な支持を集め、彼らはポスト・パンクにおける代表的バンドに登りつめる。しかしながら、バンド初となる全米ツアー前日の80年5月18日、フロントマンイアン・カーティスが自らの命を絶ったことによりジョイ・ディヴィジョン、そしてイアン・カーティスは伝説と化した......。
本作は今や伝説と化したジョイ・ディヴィジョン、そしてイアン・カーティスという一人の表現者の姿を追ったドキュメンタリーである。
イアン・カーティス亡き後ニュー・オーダーとして現在も活動を続ける元バンド・メンバーをはじめ、昨年他界したファクトリー・レコードの伝説的オーナー、トニー・ウィルソン、作品のアートワークを手掛けてきたピーター・サヴィルなどの関係者に対するインタビュー、新たに発見されたイアン・カーティス自身の肉声テープなどを通じ、パンクの熱狂の後を生きたジョイ・ディヴィジョン、イアン・カーティスの真の姿を映し出す、ロック・ファンとしては見逃せない作品である。
また、それに加え、ジョイ・ディヴィジョンというバンドの物語を解き明かしていくことを通じ、イギリス社会、政治の変遷を記録しているという点も本作の見どころ。監督は過去にレディオ・ヘッドのドキュメンタリー映画『ミーティング・ピープル・イズ・イージー』を手掛けた映像作家、グランド・ジーであるが、本作には都市地理学に精通した彼の視点が見事に活かされている。
単に回顧的なアーティスト・ドキュメンタリーとは一線を画す秀作。ロック・ファンならずとも一見の価値がある。
Text:honeyee.com
『ジョイ・ディヴィジョン』
監督・撮影:グランド・ジー
製作:ハドソン・プロダクションズ、
ブラウン・アウル・フィルムズ
出演:ニュー・オーダー、
ピーター・サヴィル、トニー・ウィルソン、アニーク・オノレ、アントン・コービンほか
配給:トランスフォーマー、スローラーナー
2007/イギリス=アメリカ
上映時間:93分
原題:JOY DIVISION
©Hudson Productions Ltd, 2007
5/17(土)より、
渋谷シネ・アミューズにてロードショー
5/24(土)より、レイトショーにて上映