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『アフタースクール』

『アフタースクール』

テクニシャン・内田けんじが送る随所に仕掛けが施された驚きのエンターテインメント。

08 5/30 UPDATE

ツラい。

今年とっておきの面白い作品として強く強くオススメしたいけれど、ほとんど何も書くことができない。大泉洋は人の良い中学教師。堺雅人は彼の親友でエリートサラリーマン。佐々木蔵之介はヤバい探偵。ま、ここまではいいだろう。でも他のキャストについてはぜんぜん書けない。ストーリーについてもあんまり知らないほうがいい。

おそらく本作を観る人は、内田けんじが前作『運命じゃない人』(’05)で見せつけた、ミステリ的構成力の確かさ、プロットの隙のなさ、張り巡らされた伏線の巧みさ、キャラクターのユニークさを期待しているだろう。もちろん、美しく爽快にダマしてくれることも。

んなもんで、ハードルはすごく高いはずだが……まずは軽々とクリアしてしまっているのが恐ろしい。

しかも流石テクニシャン、同じ手は二度連続して使わない。前作がひとつの時間軸に起こった出来事を複数の視点からモザイク状に構成することでトリックを生み出していたのに対し、今回はいたってストレート。いちおう物語は時系列に沿って進んでいく。

しかし、というかやはり、というか。そこには隅々に至るまで何らかの仕掛けが施されているのだ!それは作劇上のものだけでなく、キャスティングされた俳優たちのパブリック・イメージもまたトリックのひとつ。イイ奴、悪い奴、醜いやつ……といえば『続・夕陽のガンマン』の原題だが、あの映画みたくまさに虚々実々、誰が悪人で誰が善人だか最後まで判らない。でも人間なんてそんなものさ、要は学校出てからの人生を、どんな哲学に重きを置いて暮らして行くかだ……とはタイトルに秘められたメッセージだが、とにかく重箱の隅を突つきまくるつもりで臨んでいただきたい。それでもきっとダマされる(笑)。

Text:Milkman Saito

『アフタースクール』

監督・脚本:内田けんじ
出演:大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、
田畑智子、常盤貴子、北見敏之、
山本圭、伊武雅刀
2007/日本
上映時間:102分
配給:クロックワークス
宣伝:ドラゴンキッカー
©2008「アフタースクール」製作委員会

渋谷シネクイントほか全国公開中

http://www.after-school.jp/