08 10/08 UPDATE
なんといっても主役に、あのロバート・ダウニー・Jr.をもってきたことに尽きるのだ、この映画は。
何度となくドラッグで問題を起こし、たび重なる逮捕に刑務所への収監、それでも懲りずリハビリ・センター行きと、名実ともにハリウッド屈指の問題児である彼。でも不思議なことに、シャバにいるうちは仕事が絶えないという、そういう意味では愛され尊敬される演技者であったのだが......いやぁ、こんな映画で完全復活し、かつてないスター・ヴァリューを得ることになるとは! なんせアメコミのヒーローだからして。
といっても物語は相当ヒネくれている。モラルなき巨大軍需企業の社長にして天才発明家のトニー・スターク、というのがダウニー・Jr.の役どころ。つまり世界中の紛争地帯に、自分が開発した強力兵器を見境なく売りまくってる武器商人なわけだ。しかも無類の女好きで、プレイメイトから反戦ジャーナリストまでヤり放題(笑)。
そんな彼は、今日もアフガニスタンの砂漠を、米軍ジープでウィスキー・ロック呑みながら移動中。ところが......自分の売りさばいた武器でテロ集団(どう見てもタリバーンに見えるが、多国籍テロ組織)に攻撃されて拉致監禁、新兵器開発を強制される。
まあ、ここでスタークは「武器の製造を止める!全世界の武器をぶっ潰す!!」なぁんてヒロイックな志に目覚めるワケだけれど......さんざ"死の商人"やっときながら、自分が半殺しになってはじめて改心するという刹那主義(笑)。このイイ加減さがどうにもダウニー・Jr.にぴったりなんだよな。もともとはヴェトナム戦争真っ最中に描かれたコミックで、ヴェトコンぶっ殺す超右翼ヒーロー。これを戦争の大義さえ根底からユルユルになった現代に換骨奪胎したアイディアがまず素晴らしいけれど、彼以外のキャスティングだとここまでしっくりこなかったろう。しかも、とうに演技派として定評を得ている男が、パワード・スーツといえば聞こえはいいが、要するに「鉄のカタマリ」を装着し(なんせ「鉄男」だもん)、世界の空を飛びまくるのであるからして(笑)。
でもこの装着シーンのメカニズムがまたSF心満点。カッコよくて痺れるのだ。ただひとり頭の上がらぬ存在である秘書(グウィネス・パルトロウ。美しい!)との漫才チックなやりとりと、やたらプラトニックなロマンス(エロ親父なのに!)も楽しい。いいねぇ、判ってるねぇ。さすが作品の質の高さと面白さでは(僕的に)定評のあるジョン・ファヴロー監督!と拍手してさしあげましょう。期せずして陰と陽の関係になったが、『ダークナイト』と本作でアメコミ映画は新次元を迎えたといって過言ではないんじゃなかろうか。
で、クレジット後のオマケだが......つまりマーベル・コミックの「アヴェンジャーズ」をいずれ結成するってことですよね? じゃどうするんだ、キャプテン・アメリカは。これまたガチ右翼だぞ(笑)。
Text:Milkman Saito
『アイアンマン』
監督:ジョン・ファブロー
脚本:マーク・ファーガス、ホーク・オストビー、アート・マーカム、マット・ホロウェイ
製作総指揮:ルイス・デスポジート、ピーター・ピリングスリー、アビ・アラド、スタン・リー、デビッド・メイゼル、ジョン・ファブロー
製作:アビ・アラド、ケビン・フェイグ
出演:ロバート・ダウニー・JR.、テレンス・ハワード 、ジェフ・ブリッジス 、グウィネス・パルトロウ 、ショーン・トーブ 、ファラン・タヒール 、レスリー・ビブ
製作国:2008年アメリカ映画
上映時間:2時間5分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
日劇3ほか全国ロードショー中
http://www.sonypictures.jp/movies/ironman/
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