09 7/17 UPDATE
実は私、ドリームワークスのアニメーションをイマイチ評価していないのである。とりわけ『シュレック』のシリーズなど、子供連れで劇場にやってくるファミリー層をきっちりマーケティングして作ってます、といった大衆迎合的色彩が回を追うごとに強まって鼻持ちならない。親の世代にすり寄ったような80年代ポップスの濫用もね。
でも昨年の『カンフー・パンダ』あたりから始まるマニアック路線は、なかなかイイ線いっている。そうとうオタク的な偏った嗜好を、誰でも楽しめるものにアレンジするセンスが冴えているのだ。今回は一目瞭然、SFネタ。というか、'50〜'60年代のB級モンスター映画への愛情あふれるオマージュなのだな。
愛するダーリンとの結婚式当日、とつぜん宇宙から飛来した隕石に激突してしまったヒロイン、スーザン。なんと式の最中に緑色に光りはじめたかと思うと、身長15mに巨大化! 教会を破壊してしまった彼女はモンスターとして政府の秘密施設へと強制拿捕されてしまう。
そこでは過去何十年のあいだに地球上で発生した怪物たちが隔離され、生かされていた。アメーバ状の身体になんでも呑み込んでしまうボブ(『マックイーンの絶対の危機』('58)のザ・ブロブですな)、ゴキブリと人間の遺伝子が融合してしまったマッド・サイエンティストDr.コックローチ(クローネンバーグもリメイクした『蝿男の恐怖』('58)ですな)、海洋生物と原始人とのあいだの半魚人ミッシング・リンク(『大アマゾンの半魚人』('54)ですな)、東京を襲った100メートルの超巨大幼虫インセクトサウルス(日本人なら誰でも知ってる、あの東宝印の......)。そんな奴らの中に放り込まれたスーザンも、ここを統括するモンガー将軍に「ジャイノミカ」と"モンスター・ネーム"をつけられて完全に怪物扱いだ(『妖怪巨大女』('58)の50フィート・ウーマンですな)。
実は彼女を巨大化させた隕石には宇宙を支配するパワーが宿っていた。お約束通り、そいつを狙ったイカ型宇宙人ギャラクサー(どことなく『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』('68)のバイラスに似てるのね)が地球に襲来、一つ目巨大ロボットをアメリカに放った。『未知との遭遇』のレミドドソの5音で友好的ファースト・コンタクトを試みた大統領に対し、ロボットは聞く耳持たず破壊をはじめる。そんな非常事態に際し、ここぞとばかりにモンガー将軍は無理矢理モンスターたちを総進撃させるのだ!
車をローラースケート替わりにしたスーザンのサンフランシスコ坂道チェイス、『水爆と深海の怪物』('55)ばりの巨大蛸ロボット金門橋襲撃、そして敵宇宙船でのクローン軍団との対決、と見せ場も派手で、かつ笑わせてくれる。
まあ、音楽がいつものように'80s趣味なのは謎だけど(意味もなく『ビバリーヒルズ・コップ』の主題曲が引用されたり。オカシいんだけどね)、 エンドタイトルの曲選とデザインは秀逸だ。あのB-52'sの「プラネット・クレア」(リフが「ピーター・ガン」のヤツですね)にノってモンスターズたちの活躍がシルエット処理されるのだが、これがカッコ良過ぎ! しかしまたこうしたテイストとて、B・C級怪物映画の牙城であった映画会社AIP風といえばいえるワケで、こんなところにもマニアの愛が漲っているのだな。
Text:Milkman Saito
『モンスターVSエイリアン』
監督:ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン
製作:リサ・ステュワート
脚本:メイヤ・フォービスウォレス・ウロダースキー、ロブ・レターマン、ジョナサン・エイベル、グレン・バーガー
音楽:ヘンリー・ジャックマン
原題:Monsters vs. Aliens
製作国:2009年アメリカ映画
上映時間:150分
配給:パラマウント・ピクチャーズ
2009年7月11日より新宿ピカデリーほか全国にて公開
© 2009 DreamWorks Animation L.L.C