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アンストッパブル

アンストッパブル

実話に基づいた超大作、
暴走列車に立ち向かう2人の機関士の雄志

11 1/17 UPDATE

そうそう、こういう気の利いたパニック映画が観たかったんだよね〜。まったくもって久しぶりに素直にハイな気分にさせてくれましたよ。

監督のトニー・スコットはうるさがたの映画好きも一目置く、名うてのエンターテインメント職人である。でもちょっと前に撮ったやはり暴走列車ものの『サブウェイ123 激突』('09)は、まさしく気の利いたサスペンス映画を代表する『サブウェイ・パニック』('74)のリメイクであるにも関わらず、オリジナル版の重要な要素たるユーモアが欠落したチカラ技一本な展開にいささか食傷したものだ。だが今回は違う。

「事実に基づく物語」ではあるらしいが、ただし、ここには意外な展開など何ひとつないに等しい。予想できる展開が必ず先に待ってはいるのだけれど、それでも観客をグイグイ引きこみ、映画に釘付けにしてしまう......コレが真の実力者の腕ってモンだ。

舞台はペンシルヴェニア州、南部の操車場。職務経験はほとんどゼロだが、鉄道一家に生まれた新任車掌ウィル(『スター・トレック』の若きカーク船長クリス・パイン)が出勤してくると、老機関士たちはこぞって毒舌を浴びせる。それも仕方ない。勤続28年のベテラン機関士フランク(トニー映画常連のデンゼル・ワシントン)は、給料が安くて済むこのヒヨッ子と首をすげ替えられる形で解雇通告を受けたのだ。この世代間闘争の見本のようなふたりがコンビを組まされ、停車中の貨物列車を北方へと運ぶことになる。

舞台は転じて、北部にある別の操車場。毎日のルーティン・ワークに緊張感ゼロな機関士が、貨物列車を操車場内の別の場所に移動中、あろうことか自動制御装置をオフにしたまま運転席から降りて線路のポイントを切り変えようとした (このダメダメぶりがいかにもでリアリティ抜群)。ところが切り替えに失敗、列車は操車場から出ていって、次第にぐんぐん加速しはじめる。立ちはだかるものあれば豪快に粉砕しながら暴走する巨大貨車。不運にもこの貨車には溶融フェノールなる化学物質が大量に積まれており、都市部で脱線すれば壊滅状態、しかもレールの先には急カーヴの地点があって、線路下には巨大な燃料タンクがぎっしり建っているのだ。

いっぽう、思いっきり気まずい状態で仕事を進めていたフランクとウィルだが、北からやってきたこの暴走列車とあわや正面衝突、というハメに陥る。これでやおら覚醒したのがベテラン機関士フランクの知識と勘、そして仕事愛だ。彼は暴走列車を止めるべく、いちかばちかの奇策に打って出て......。

もちろんこれだけの大事故だからマスコミも取材に走る。ひっきりなしに暴走列車の周囲を報道ヘリが至近距離で舞い、これが緊迫感とリアリティを倍増。このヘリから電波に乗った停車作戦の一部始終は、離婚調停中のウィルの妻子、そして母を亡くしてもフーターズ(ってのがまたイイね)で学費を捻出しているフランクの娘たちの目にも届く (そう、この"家族愛"ってヤツもミソですね)。

パニック映画のシチュエイション直球勝負100分間の中に、手際良くユーモアも人間ドラマもぶちこんで観客を大興奮させたうえ、すっきりハッピーな大団円に導く爽快感! 大団円、なんて言っちゃったけど、こんな映画が悲劇で終わるワケがないのだ(笑)。ほんまトニーはん、エエ仕事してまっせ。

text:Milkman Saito

『アンストッパブル』
監督:トニー・スコット
脚本:マーク・ボンバック
出演:デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソンほか
原題:Unstoppable
製作国:2010年アメリカ映画
上映時間:99分
配給:20世紀フォックス映画
TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー!

www.unstoppable.jp

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