11 10/20 UPDATE
もはやオリジナルの5部作について、改めて語る必要はないだろう。......とは書いてみたものの、一作目の公開から40年以上経ってるんだよな、『猿の惑星』シリーズ。 BATHING APEがロゴで『最後の猿の惑星』の台詞「APE SHALL NEVER KILL APE」=「猿は猿を殺さない」を使ったのも、その影響で第一作がリヴァイヴァルされたのも、ティム・バートンがその第一作をリメイク(おっと、「リ=イマジネイション」だっけ)したのも10年以上前のことだ。
しかしだ。もはやオリジナルの5部作は古典である。ま、「SF映画ベスト10」なんて企画があれば今でも決まって上位にランクインする第一作に比べ、続く4作は出来が悪いなんてこともよく指摘されることで、まあ、それは事実でもあるのだが、「5部作全体が時系列的に円環構造を成す」なんてSF的アイデアを実現したシリーズものは後にも先にもなく、それだけで特筆するに値するというもの。今回の『猿の惑星:創世記』は、オリジナルでいえば4作目の『猿の惑星/征服』に相当するが、主人公シーザーの名前とおおまかなプロット以外は別の物語として進行する。
舞台は現代のサンフランシスコ。巨大製薬会社ジェネシスに研究員として勤めるウィル(『スパイダーマン』『127時間』のジェイムズ・フランコ)はアルツハイマーの新薬開発に没頭している。実は彼の父親チャールズ(『ガープの世界』のジョン・リスゴウ)もアルツハイマーを患い、日々記憶を失っているのだ。
ある日ウィルは、新薬を投与していた実験用チンパンジー"ブライト・アイズ"が、驚くべき知能を示すのに気づく。チンパンジーにとって、アルツハイマー新薬は脳を飛躍的に活性化させるのかも知れない......ウィルが実験結果を上司の前で発表していたその時、"ブライト・アイズ"がいきなり檻を破って暴れ出し、あえなく警備員に射殺されてしまう......。
こんな危険な薬の開発は即刻中止せよと所長に命じられたウィルは、じきに"ブライト・アイズ"が子を産んでいたことに気付く。彼女は我が子を守ろうとしただけだったのだ。プロジェクトに関わった実験動物はすべて処分せよとの社長命令が下った今、ウィルは赤ん坊猿を自宅に連れ帰ることにする。
"シーザー"と名付けられた子ザルは、母の遺伝子を受け継ぎ、やがて目覚ましい知能を発揮するようになる。ウィルやチャールズとも親子のような関係が生まれていたが、8歳になったとき事件は起こった。
研究所から秘密裡に持ち出したアルツハイマー新薬の効果により、一時期は奇跡的な回復を見せていたチャールズだったが、薬への抗体を発現してしまい再び症状が悪化。常日頃から不寛容な隣人とトラブルになり、それを見たシーザーが隣人を激しくとっちめてしまう。人間を傷つけたケモノがそのまま放っておかれるはずがない。シーザーはウィルと引き離され、霊長類保護施設の狭い檻の中に収監されてしまう。
なぜ愛する者を守っただけなのにこんな目に遭わねばならないのか。人間はなぜ他者を排斥したがるのか。ウィルはなぜ僕を助けださないのか。飼育員の陰湿な虐待がシーザーを抑圧し、忸怩たる思いをさらに募らせる。だが、施設内の霊長類仲間たちはどうだ。最初こそチンパンジー社会のイニシエーションを受けはしたが、やがて知能と勇気でボスの座を奪い、皆から恐れられる巨大なゴリラや、サーカス育ちの賢いオランウータンとも心を通わせる。
やがてシーザーは、育った部屋を想って壁にチョークで描いた窓の絵を消し、諸々の問題をクリアしてようやく連れ戻しにきたウィルの手を拒絶する。ウィルの優しさ、親心をよくよく知りつつも、アイデンティティに目覚めたシーザーは「サルたちのリーダー」となる道を選ぶのだ。
そしてシーザーは毛利元就の三本の矢の故事よろしく、サルたちにユニティを説く。深夜、施設を抜け出してウィルの家から試薬を盗み出し、仲間たちの眠る檻に噴射......「火星探査ロケット、宇宙で消息不明!」のニュースが飛び交うその日(つまり第一作のオープニングだ)、シーザー率いる霊長類たちは人間社会に叛乱を起こす!!
過去作のように俳優に特殊メイクを施すのではなく、今回のサルたちはモーション・キャプチャーだ。パフォーマンス・スーツとヘッド・ギアを着けた俳優の、動きや表情をそのままデータ化してアニメーションへと転化する。演じるのはピーター・ジャクソン版『キング・コング』でも主役を張ったアンディ・サーキス、技術はやはり『キング・コング』のニュージーランドのWETAデジタル社。ことにシーザーの微細な表情の変化は感動的で、しかも物語のほとんどはシーザー目線。反乱の長となる彼は、奴隷軍を率いてローマに挑んだあのスパルタカスそのもので、いやあ燃える燃える。社会的・個人的・種族的な愛憎模様が絡みからまるゴールデン・ゲイト・ブリッジの大決戦はキューブリック版に勝るとも劣らなずドラマティックだ。
ちなみにシーザーを収容所送りにする要因をつくった不寛容な隣人だが、彼の職業はパイロット。強度を増した新薬の副作用により、人類全体の運命を決定づけてしまうことになるのだが......これってAIDS大流行の火種となったゼロ号患者、いわゆる「ペイシェント・ゼロ」をどうしても想わせるのだけど......。
text:Milkman Saito
原題: Rise of the Planet of the Apes
監督: ルパート・ワイアット
出演: ジェームズ・フランコ、フリーダ・ピント、ジョン・リスゴー、ブライアン・コックス、トム・フェルトン、アンディ・サーキス、
制作国: アメリカ
映画
制作年: 2011年
上映時間: 106分
配給: 20世紀フォックス映画
http://www.foxmovies.jp/saruwaku/
TOHOシネマズ日劇他全国上映中!
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