12 11/06 UPDATE
日本映画から、昨年の『東京公園』(青山真治監督)と『サウダーヂ』(富田克也監督)に続き、本年度のロカルノ映画祭最高のコンペ「国際コンペティション部門」に正式ノミネートされた期待の映画。監督の三宅唱は、本作が劇場公開デビュー作となる28歳の俊英だ。加瀬亮など、映画をこよなく愛する俳優たちをうならせた処女長編『やくたたず』をみた村上淳が、監督にラブコールを送りこの企画が実現した。職業俳優と仕事をするのも初めてだったという三宅は「俳優という存在とはいったいなんなのか?」という自らの疑問をきっかけに、本作では俳優という存在をそのまま物語の形式におとしこんでいる。
物語で村上淳が演じる映画俳優ハジは、40歳を手前に人生の分岐点に立ち、すべてがまるで他人事のように目の前を通り過ぎる日々を送る。そんなある日、彼が旧友に誘われ久しぶりの故郷を訪れる道中にふと居眠りをして目覚めると、大人になった現在の姿のまま制服を着た友人とともに高校時代に戻っている。全編モノクロ映像の中、2つの現在と過去が交錯していく。「過去の選択の結果の積み重ねとして現在がある。」という劇中の台詞に象徴されるように、過去の選択を再び主体的に引き受けて行く事で、現在を取り戻していく主人公のハジ。
ロケハンにも参加したという村上をはじめ、俳優達が選んだ衣装、インプロヴィゼーションなど、俳優達自身による積極的な関与が多分に盛り込まれているこの映画。40歳手前の映画俳優、スケートボードといった実人生と重なりあう要素の多い主人公のハジを演じた村上淳をはじめ、渋川清彦、三浦誠己、河井青葉、渡辺真起子、菅田俊ら、脇を固めるエッジの利いた実力派俳優達の生き生きとした演技は、「それぞれの選択の一回性」ということを、俳優という存在として演じきっているからなのかもしれない。
text: Akihiro Hayashi
脚本・編集・監督:三宅唱
企画・プロデュース:佐伯真吾、松井宏、三宅唱
出演:村上淳、渋川清彦、三浦誠己、河井青葉、渡辺真起子、菅田俊
制作:PIGDOM 製作:DECADE inc.
挿入歌:Daniel Kwon 大橋好規
主題歌:"オールドタイム" 大橋トリオ
日本/2012年/113分/1.85/B&W/Dolby SR/35mm
2012年11月10日(土)より、オーディトリウム渋谷にて、ロードショー
全国順次公開予定
http://www.playback-movie.com/
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