honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

アメリカ映画の、とりわけ青春ものによく出てくる「フラタニティ」。ま、これは男性の場合で、女性は「ソロリティ」というのだが、要するに大学内にある友愛クラブのことだ。

秘密結社を真似たような儀式なんかもあるこのフラタニティを、はじめて僕たちが知ったのは多分、ジョン・ベルーシ＆ジョン・ランディスの傑作『アニマル・ハウス』('78)。これまた秘密めいて、たいてい3文字くらいのギリシア文字でクラブ名を名乗ることが多いからか、古代ギリシアのトーガ姿(ホントは古代ローマの衣装だけど)でフラタニティを破壊しまくるベルーシによって、そうしたアメリカ的学生文化のアホな風習をさんざ思い知らされたわけ。他にもコメディ系では、オタクのことを「ナード」というと初めて知った『ナーズの復讐』('84)、スパイク・リーのメジャー・デビュー作『スクール・デイズ』('88)、『ハングオーバー！』シリーズで大ブレイクのトッド・フィリップス監督が撮った『アダルト♂スクール』('03)等。シリアス系ではロバート・デ・ニーロ監督、マット・デイモン主演のCIAスパイ・ドラマ『グッド・シェパード』('06)や、デイヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』('10)、最近ではチャニング・テイタムが男性ストリッパーを演じる『マジック・マイク』('12)にもフラタニティ＆ソロリティのパーティがちょこっと出てきたっけ。まあ「ソロリティ」のほうは、実は向こうのポルノの定番なのだが。

前置きが長～くなったが、つまりは本作、この「フラタニティ」ものなのである。『カーズ』と『カーズ2』がキャラだけが一緒で全然別種の映画なように、最近のピクサーはpart2を作るとき、あえて違う路線を狙うようだ。今回は『モンスターズ・インク』の続編、というか前日譚。前作で重要な役割を果たした女の子ブーはおろか、「モンスターズ・インク」って会社も物語の一要素に過ぎない。今回は、青くてデカくて毛むくじゃらのサリーと、緑でチビで一つ目小僧のマイクのキャンパス・ライフを描いた物語になっているのだ。

小学校の工場見学でモンスターズ・インクの怖がらせ屋スターに憧れを抱いたマイクは、彼らの出身校「モンスターズ・ユニバーシティ」(MU)の「怖がらせ学部」に進学することを決意。時は経って、みごとMUに合格したマイクが最初のクラスで出会ったのは、かつて「伝説の怖がらせ屋」としてその名を轟かせた女校長ハードスクラブルと、「怖がらせの天才」として有名な父を持つサラブレッド・サリーだった。しかし「怖くないモンスターは居ても無駄」と身もフタもなく断じられたマイクは校長から学部追放を宣告されてしまう。

尞を追い出されたマイクが意趣返しで身を寄せたのは、ショボいフラタニティ「ウーズマ・カッパ」。そこはちっとも怖くない「怖がらせ学部」以外のモンスターばかりが集まっていて(ひとりはセールスマンを辞めて復学したおっさん)、そもそもクラブはいちばん冴えない会員の自宅(親つき)。しかし、外見は怖くないものの頭の切れるマイクは校長に目にモノ見せるべく、学部復帰を賭け、学内のフラタニティ対抗「怖がらせ大会」に参戦！　天性の才能を持ちながらも、傲慢で怠け者、それでいて自信過剰なおかげで煙たがられてたサリーも人数合わせで「ウーズマ・カッパ」に加わることに。やがて彼らは、体育会系で底意地悪いエリート集団「ロアー・オメガ・ロアー」(前作の嫌われ者ランドールも在籍)と雌雄を決することになるが......。

アニメーションのクオリティは前作から遥かに進化、ランディ・ニューマンの音楽も、いかにも"大学っぽい音"なドラムラインやニューオリンズ・スタイルのジャズ・ファンクで耳を悦ばせてくれる。そんなに予定調和には進まない物語は、かなりなサスペンス＆しみじみな局面を迎え、やがて『モンスターズ・インク』のゴールデン・コンビ誕生へとつながっていく趣向。小ネタもいちいち細かくて対象年齢高し。これは12年の前作を観て育った青年たちへの気の利いたプレゼントかも知れないな。

text: Milkman Saito