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主演は『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『宇宙人ポール』で知られる、英国俳優サイモン・ペッグ。いまやハリウッドでも、映画『スター・トレック』や『ミッション・インポッシブル』のレギュラー俳優になるなど、オタクの理想郷を体現したような俳優だ。
その恋人役を務めるのは、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』で、アカデミー主演女優賞ノミネートを果たしたロザムンド・パイク。エドガー・ライト監督作『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』で、二人はすでに共演済。今回は同棲中のカップル役だ。原作はフランスの精神科医フランソワ・ルロールによる、世界的ベストセラーとなった「幸福はどこにある―精神科医へクトールの旅」。
精神科医のヘクター(サイモン・ペッグ)は、毎日不自由はないが機械的な日々を送り、マンネリな感じで患者の話を聞いている。美人で、気が利きすぎるほどの恋人クララ(ロザムンド・パイク)とも、結婚や子作りはなんとなく先延ばしにしていた。しかし、不幸を訴える患者の話を聞くだけの自分は、「そもそもしあわせを知っているのか?」と疑問を抱き、一念発起してしあわせを理解するための期限の無い世界旅行に出る。
自己啓発映画はまだ人気は高いのだろうか? 本作はまさにそんな系統なので、自分探しをしている人向けでもあるし、サイモン・ペッグのシュールなユーモアが、旅の楽しさの映画に留めてもいるので、自己啓発もしくはサイモン・ペッグのファンは、どちらも満足できると思う。
最初に降り立った上海では、富豪のビジネスマン(ステラン・スカルスガルド)と偶然連れ立つことになる。高層ホテルからの美しい夜景に、ゴージャスな食事と東洋人の美女。けれどもそれを手にできるのは、お金が対価となる。チベットの雪に包まれた高山から、ヘクターは一気にアフリカへ。しかし危ない地帯へ踏み込み、麻薬密売人と関わってしまう。
旅に出るまでのヘクターの無気力だった日々は、クララの束縛や(この人はわたしがいないとダメ)という思い込みが、彼の自己判断力を奪っていたとも感じられる。ロザムンド・パイクという女優の基本的な表情の無さが、ヘクターを出勤まで秒刻みでコントロールして見送る姿に、映画の趣旨と違った恐怖を覚えてしまう。
しあわせ探しの旅は、海外に居場所を見出したり、旅そのものを生活にしたり、故郷に戻ったらこれまでの生活を総括して、まったく異なる新生活をスタートさせる大きな決断も起こしうるだろう。ヘクターのしあわせ探しは、もともと「クララのもとに必ず帰る」と断言したうえでの旅だから、「ここがしあわせである理由」を確かめるための旅だ。本来あるものを見失うことだってある。改めてそれを実感するための旅もアリだと思う。
違う気候に晒されると、自分が上書きされたように新鮮な気分になる。日常に戻るにしても、その気候を知ってからはもはや、知らなかった前の自分とは同じではない。この映画は、そんな肌身で感じた経験を思い起こさせる。
text: Yaeko Mana
『しあわせはどこにある』
監督:ピーター・チェルソム
製作:ジュディ・トッセル/クラウス・ドール/クリスティーン・ヘーブラー/トリッシュ・ドールマン
キャスト:サイモン・ペッグ/ロザムンド・パイク/トニ・コレット/ステラン・スカルスガルド/ジャン・レノ
配給:トランスフォーマー
6月13日(土)より、シネマライズ、
新宿シネマカリテ、品川プリンスシネマ他全国順次公開!
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