15 7/14 UPDATE
大ヒットコメディ『ハングオーバー』シリーズの製作陣が手掛けた、B級ホラーコメディ。タイトル通り、今回人間を襲うのはビーバー。企画会議という名の飲み会で「次、動物ホラーにしようか」「ゾンビブームだよねえ」「ゾンビ、ビー...ゾンビーバー」「ハハハ!それ超くだらねえ、撮ろう」みたいな適当さで、決まったんじゃないかなと想像する。もししっかり真顔で打ち合わせをしてても、「次はゾンビーバーで」と言っていたら、飲み会アイディアと大差ない。
本作は80年代のホラー映画のパロディ的に作られている。80年代に『13日の金曜日』シリーズなど、ティーンエイジャーが被害者になるスラッシャー映画の流行とともに、それらは話の基盤が何故か似ることから、パターンやお約束が徐々に見え始める。
・若者がサマーキャンプなどで田舎に行く。
・不埒なカップルがセックスを始めると、正体不明の殺人鬼に襲われる。
・一人で逃げ出したり、仲間を見捨てたヤツは襲われてアウト。
・ファイナルガール(最後の生き残る少女)は清純派、優等生な処女。
そういったクリシェが出来上がってしまうと、『スクリーム』(96年)のようにメタ的に殺人鬼や被害者がこのクリシェを応用したり、逆にファイナルガールも残らない陰惨な皆殺し系映画も多く出てきた。
本作はホラーコメディなので、これらのベタなお約束をわざと踏襲する。田舎の湖畔へ泊りに来た三人の少女。携帯は圏外、すぐ泳ぎに出て水着姿になり、脱ぎ要員のサービスもある。そこにカレシたちも勝手にやってきて、バカ騒ぎをしセックスもする。大体、動物や自然形態が破壊されるのは、本作のように化学薬品の廃棄処分のドラム缶が車から転がり落ちて、水源を汚染するというのもありがちだ。80年代のホラーは文明社会への警鐘、見知らぬ人への警戒、若者のセックスへの戒めが根底にある場合が多い。そのため、『ゾンビーバー』の恋愛話も、人間の心の裏表によって、あえてこじれてファイナルガールは意外な存在になる。
で、このゾンビーバーたちはCG全盛のこのご時勢に、あえてハリボテ感満載。マペットの凶暴になったビーバーがジタバタと不器用に暴れ、馬鹿馬鹿しく見えながら、大量のすばしっこく獰猛なゾンビーバーに取り巻かれてしまうと、かなり絶体絶命感がある。家屋に立てこもっても、ビーバーの特質をいかした意外な方法で侵入して来たり、ゾンビの感染力もあったりと、ジェットコースター的に物語は展開していく。『悪魔のいけにえ』や『クリープショー2』へのオマージュなど、ホラー映画ファンへの目配せもあって楽しい。
なによりも、エンディングロールに意外な破壊力がある。ここでかかる曲に一番笑ってしまった。なんだか耳について、いまだに頭の中で延々ループしてしまうので、もう勘弁してほしい気分だ。
text: Yaeko Mana
『ゾンビーバー』
監督:ジョーダン・ルービン
製作:エバン・アストロフスキー/クリス・レモーレ/クリス・ベンダー/ティム・ザジャロス
キャスト:レイチェル・メルビン/コートニー・パーム/レクシー・アトキンズ/ハッチ・ダーノ/ジェイク・ウィアリー
配給:武蔵野エンタテインメント/インターフィルム
公開中
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