15 8/25 UPDATE
『パラノーマル・アクティビティ』 『インシディアス』のプロデューサーが新たに見出した、若手監督によるPOV(主観映像)を主体にしたホラー。近年流行が続き、量産されるPOVホラーの中でも、久々に個性としっかりした語りを感じる一作だ。
アメフト部のライアンは、アメフトを辞めて演劇部に入った友人リースをからかうため、ビデオカメラで彼の稽古や休憩時間を直撃する。リースは「単位を取るため」と言うが、なぜか演劇に集中しているようだ。ライアンはリースの下手くそな芝居や、ナヨナヨした衣装をバカにする。彼は演劇部の裏方のオタクをイジメたりと、かなりムカつくキャラだ。いたずら好きのライアンは、明日に本番を控えたリースがセリフもろくに覚えていないため、「今夜学校に忍び込んで、セットを壊して舞台をつぶそう」と提案する。
リースたちが演じる芝居は『絞首台』。1993年にこの高校で演じられた際、主人公が絞首刑になるシーンで事故が起こり、チャーリーという生徒が亡くなってしまった。それ以来、封印されていた演目という設定だ。演劇部の中心で、舞台のヒロインを演じるファイファーはジンクスを気にするが、ライアンはバカなお調子者なので、彼女の目の前で演劇部の禁句である「チャーリー」という言葉をわざと言う。そして夜、ライアンの彼女でチアリーダーのキャシディも同行し、装置を壊しているところへ偶然ファイファーも出くわしたあと、怪奇現象が4人を襲う。
仄かに見える気味悪いものや、突然ドアがしまってすぐ後ろの友人と引き離されるなど、ホラー描写が小気味よく立て続く。また、幽霊の見た目をどうするかは、もはや出尽くした感のある問題だが、本作は作り手の自信のほどがうかがえる、新たな扮装の幽霊を登場させている。その見せ方も遠くから目の前まで、畳み掛ける速度や距離のおき方が非常にうまくて怖い。
ただ、せっかく恐ろしいリズムで映像描写ができる監督なので、デカい効果音でビックリさせるのはやめてほしい。それは、怖いのではなく驚いているだけだ。真後ろにいた車にクラクションを鳴らされて飛び上がるのと同じなので、もう少し音によるびっくらかしは抑えて、違う音の怖さを狙ってほしい。
非常に満足な出来のホラーなのだが、そのうえで「ありえた筋書」も考えてみたい。佳境にさしかかって、主人公たちが舞台に取り込まれたようになる瞬間がある。そのとき異様な高揚感や感銘があって、舞台と一体になることでの美しい自己犠牲や愛が、一瞬漂った。そのあと、亡霊の怨念の強さを感じさせる流れになっていくのだが、それはそれで良くできている。意外な展開で捻りが効いているのだが、でもそれは「ホラー優等生」であって、落ち着きどころが良すぎるように感じるのだ。あの恐怖の末に、舞台をなぞり始めるようなエモーショナルなストーリーで終わりに突き進んだら、無性に愛さずにいられない映画になった気がするのだが......。これは女性的な感覚だろうか。
本作はクリス・ロフィング&トラヴィス・クラフ監督コンビのデビュー作である。クラフは主にビジネス担当で、生粋のホラーマニアというロフィングが編集も担当しているから、本作のうまさは彼のセンスだろう。冒頭の1993年に舞台を撮影している場面で、観客席のエキストラたちは、リハーサルではウソの展開を見せられていたため、本番では本当に事故が起こったと思ったらしい。そういう演出のあくどさも、監督としての優秀な芽吹きを感じる。
text: Yaeko Mana
『死霊高校』
監督・脚本・制作:クリス・ロフィング&トラヴィス・クラフ
製作:ジェイソン・ブラム
キャスト:リース・ミシュラー/ファイファー・ブラウン/ライアン・シューズ/キャシディ・ギフォード
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開中
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