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ヴィジット

ヴィジット

随所に忍ばされた伏線と、不可解な恐怖。

15 10/23 UPDATE

15歳のベッカ(オリビア・デヨング)と、13歳のタイラー(エド・オクセンボールド)姉弟は、生まれて初めて子どもたちだけで旅をすることになった。母が若い頃に家出をして以来、疎遠になっていて、一度も会ったことのない祖父母の家へ泊りに行くのだ。

シャマラン監督らしい、ジワジワと不可解な恐怖がやってくる映画である。姉弟を歓迎してくれる祖父母だが、時折話しかけてもまったくリアクションがなくなったりする。老人たちは夜が早いので「21時半以降は部屋から絶対に出ないこと」と言われていたため、寝付けない子どもたちが部屋で退屈していると、廊下を歩き回る異音がする。恐る恐るドアを開けた姉弟は、祖母の恐ろしい光景を見てしまう。だが、翌朝祖父に聞いても、確かに納得のいくような答えをされて、老人特有のものかと一応は納得するのだが......。

姉のベッカは映画制作に凝っており、常にカメラを回している。そのため、本作は姉弟のどちらかが写したPOV形式の映画となっている。弟が慌ててカメラを持つときは、慣れないのでピントがブレて始まるなど、細々したところにも工夫がされている。

二人の父親は数年前に家庭を捨てて出て行ってしまった。そのため、姉弟は父親不在のコンプレックスを抱えており、そのことについて語るシーンは、ホラー風味な本作でも異質なカットとなっている。ベッカは祖父母にも母の話を聞きたいと思うが、その話題を持ち出すと祖母は興奮状態となってしまい、話を聞き出すことができない。

祖父母の挙動が怖いのだが、この映画が個性的なのは、それらのシーンで同時に笑いも起こることだ。シャマランは元々、真面目なシーンの中に、何食わぬ顔で笑いを挟んでくる監督だった。これまでその資質になかなか言及されずに来たが、本作ではそれをかなり前面に押し出した演出となっている。もちろん、シャマランらしく突然視界に入ってきて、驚かされる怖いものなどは健在だ。

途中の姉弟たちの会話が伏線ともなっているので、何気ないシーンもお見逃しなく。ジェットコースターのように展開していくクライマックスも、囲い込まれていくようで猛烈に怖い。そして、シャマランの映画監督としての個性や巧さや、演出の積み重ねが生み出す効果を楽しんでほしい。本作はどんでん返しを期待して、筋だけを追うのは絶対にもったいない。過剰な演出部分こそが魅力であり、この映画の面白さの特質だ。

text: Yaeko Mana

「ヴィジット」
監督:M・ナイト・シャマラン
製作総指揮:スティーブン・シュナイダー
製作:M・ナイト・シャマラン/ジェイソン・ブラム/マーク・ビエンストック
キャスト:キャスリン・ハーン/ディアナ・デュナガン/ピーター・マクロビー/エド・オクセンボールド/オリビア・デヨング
配給:東宝東和

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