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英国を代表する、ジェイン・オースティンの小説『高慢と偏見』。映画やドラマで映像化され、『ブリジット・ジョーンズの日記』も『高慢と偏見』を現代に置き換えた物語がベースである。
そして『高慢と偏見とゾンビ』。オースティンの小説に、映画界でも活躍するセス・グレアム=スミスがゾンビをマッシュアップした小説だ。発売後かなり話題となり、すぐ映画化の噂が立ちながらもなかなか進まなかったのが、やっと結実したのが本作である。恋愛とゾンビのバランスが優れていて、ちゃんとオースティンの世界観をあますことなくいかしつつ、ゾンビ退治やマーシャル・アーツも楽しめる仕上がりとなっている。
18世紀のイギリス。この時代に持参金のない女性が生きていくためには、結婚は重要な手段だった。ベネット家の5人姉妹も同様。裕福なビングリー(ダグラス・ブース)が近隣へ引っ越してきたため、ベネット家の母は、さっそく娘たちをビングリーの舞踏会へ送り込む。そしてジェイン(ベラ・ヒースコート)とビングリーは互いに一目惚れ。エリザベス(リリー・ジェームズ)はビングリーの親友で、やはり富豪の騎士であるダーシー(サム・ライリー)が気になるが、彼から家柄を聞こえよがしに侮辱され、彼女の想いは憤りに転ずる。
そこにゾンビの集団が現れた。じつはこの世界ではゾンビウイルスが蔓延しており、上流社会にも感染が広がっていた。逃げまどう人々の中で、ベネット5姉妹は華麗にドレスを翻して剣を振るい、瞬く間にゾンビを確実に仕留めていく。そしてひときわ腕の立つエリザベスの鮮やかさに、ダーシーは図らずも心を奪われてしまう......。
姉妹たちは家でお喋りしながらも、常に互いに足払いの隙を狙っているような、武術の訓練が習わしだ。そして舞踏会へ行くためのドレスアップの最後に、ガーターベルトに留めた鞘にナイフを収めるセクシーなカッコよさ。もちろんゾンビがなだれ込んだ舞踏会で、姉妹が陣営を組んでゾンビ退治をするアクションシーンは白眉だ。なおかつエリザベスとダーシーの些細な恋愛感情のズレも、機微が丁寧に描かれている。エリザベスに告白したとたん、ダーシーが思い切り蹴りを食らうような「高慢と偏見」の体現としての武術と、愛し合いながらも誤解によって思いがすれ違う切ない恋愛が同時進行するという、色々な見方が楽しめる作品となっている。
text: Yaeko Mana
「高慢と偏見とゾンビ」
監督:バー・スティアーズ
製作:マーク・バタン/ブライアン・オリバー/タイラー・トンプソン/ショーン・マッキトリック
出演:リリー・ジェームズ/サム・ライリー/ジャック・ヒューストン/ベラ・ヒースコート/ダグラス・ブース
配給:ギャガ
公開中
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