16 10/21 UPDATE
ニコラス・ケイジ映画である。近年は、大量のこぢんまりとしたアクション映画やサスペンスで、自分を消費している俳優というイメージが定着していることだろう。しかし時々、ヴェルナー・ヘルツォークやポール・シュレイダー監督作のほか、鋭い選択眼で小規模な良作にも主演するので、見る方もなかなか気が抜けない人である。本作は前売り券を買うと、ニコラス・ケイジ飴が貰えるのが面白い。
監督は『クリスチーネ・F』(81年)が当時話題となったウーリー・エデル。エデルはその後も、アメリカやドイツでテレビドラマの監督や、『バーダー・マインホフ 理想の果てに』(08年)、エイドリアン・ブロディ主演のテレビムービー『フーディーニ 幻想に生きた奇術師』(14年)など、結構順調に作品を撮り続けている。ただし、そこそこの出来が続いていて微妙なのだが......。なので、この映画も「ニコラス・ケイジの映画は慣習的に見ることにしていて、そこそこなら儲けものだ」という方には、十分な作品だと思う。
物語は、大学の終身雇用の採用待ちで、連日忙しいマイク(ニコラス・ケイジ)の姿で始まる。ハロウィンの日も家族との待ち合わせに遅れてしまうが、7歳の息子チャーリー(ジャック・フルトン)にねだられ、遅い時間だが二人で祭りを見に出かけた。だが、不意にチャーリーが「幽霊に借りを返してくれる?」と不思議なことを呟き、しっかり手を握っていたはずなのに、息子の姿はかき消えてしまう。そして一年後。必死にチャーリーを探し続けていたマイクは、毎年ハロウィンの夜、行方不明になる子供たちが一定数いることを突き止める......。
ハロウィンはアメリカではイベントとなったが、元々はケルトの収穫祭や悪霊払いなどに基づく。この映画もケルト神話やアイルランドが深く関わっているが、ただ、かなり荒唐無稽な背景としておかれている。物語の構成も、霊媒師の退場の早さや、偶然出くわした盲人が何故か、子供をさらう幽霊のことを知っていたり、ただ単に楽しみでケルトの祭典に参加していた女性が、ケルトの魔女や幽霊の正体をとうとうと語ってくれたりする、ご都合主義が面白い。個人的にはクライマックス直後の、ニコラス・ケイジと映画の編集自体のあっさりした「はい、じゃあ帰ろう」的な、切り上げ方が楽しめた。本作はいわゆる、ジャンルとしての"ニコラス・ケイジ映画"の王道である。
text: Yaeko Mana
「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」
監督:ウリ・エデル
製作:ニコラス・シャルティエ/クレイグ・J・フローレス/パトリック・ニューウェル/イアン・レビ
出演:ニコラス・ケイジ/サラ・ウェイン・キャリーズ/ベロニカ・フェレ/ジャック・フルトン
配給:ギャガ・プラス
10月22日(土) 渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー
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